風景画家を募集しています INSHO-HA 現代の印象派 風景画コンテスト 応募締切 12月12日 詳細を見る →

ゴッホ『ローヌ川の星月夜』とは|『星月夜』との違い・色彩・アルルの夜景を解説

『ローヌ川の星月夜』は、フィンセント・ファン・ゴッホが1888年9月に南フランスのアルルで描いた夜景です。同じ「星月夜」という日本語題で知られる1889年のMoMA所蔵作とは別作品で、こちらはローヌ川の水面に映るガス灯、深い青の夜空、前景を歩く二人の人物を組み合わせた、実景に根ざすアルル時代の作品です。

この記事では、作品情報、描かれた場所、水面に伸びる黄色い光、ゴッホ自身の書簡に残る色彩の説明、前景の二人、同時期の『夜のカフェテラス』との関係、そして1889年の『星月夜』との違いまで整理します。ゴッホのアルル時代全体については、ゴッホとアルルの記事もあわせてご覧ください。

ローヌ川の星月夜とは

『ローヌ川の星月夜』は1888年9月、ゴッホがアルル滞在中に制作した油彩画です。オルセー美術館ではフランス語題を「La Nuit étoilée」とし、油彩・キャンバス、73×92cmの作品として所蔵しています。画面には、夜のローヌ川、対岸の街の灯り、その光を長く引き伸ばす水面、星空、そして手前の川岸を歩く二人が描かれています。

この作品で重要なのは、夜を「黒」で処理していないことです。川、空、岸、街、人工照明をそれぞれ異なる色の関係として組み立て、暗い場面でありながら画面全体を豊かな色彩で満たしています。アルル時代のゴッホは、強い南仏の昼光だけでなく、人工照明と星明かりが混じる夜そのものを、新しい色彩表現の場として捉えていました。

フィンセント・ファン・ゴッホ『ローヌ川の星月夜』1888年、アルルのローヌ川の夜景
『ローヌ川の星月夜』 フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年 油彩・キャンバス 73×92cm オルセー美術館所蔵

ゴッホはアルルのどこを描いたのか

舞台はアルル市街を流れるローヌ川です。現在のアルル観光局が案内する「ゴッホの道」でも、『ローヌ川の星月夜』はローヌ川沿いの堤防、現在の鉄道駅に近い一帯を作品ゆかりの地点として紹介しています。ゴッホが暮らしていた「黄色い家」があったプラス・ラマルティーヌからも近く、日常生活圏の中で繰り返し見ていた川辺でした。

ただし、現在の景観をそのまま「絵と同じ場所」と断定して見るのは慎重であるべきです。19世紀末の橋や街灯、河岸設備はその後に変化し、第二次世界大戦の被害や再整備も受けています。また、ゴッホは実景を機械的に写し取るのではなく、構図や星の配置を絵画として調整しています。現在の現地は制作地点を考える重要な手掛かりですが、作品画面と一対一で一致する写真記録ではありません。

フィンセント・ファン・ゴッホ『黄色い家(通り)』1888年、アルル
『黄色い家(通り)』 フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年 油彩・キャンバス ファン・ゴッホ美術館所蔵

水面に映る黄色い光|夜景の構成

画面を最も強く印象づけるのは、対岸の灯りがローヌ川の水面へ長く垂直に伸びる部分です。黄色や橙色の光は、街灯そのものよりも水面の反射によって大きな面積を占め、暗い川を縦に切り分けています。遠景に横へ広がる街並みと、手前から奥へ伸びる河岸、そして水面へ垂直に落ちる光が交差することで、夜景に明確な奥行きとリズムが生まれています。

ゴッホ自身は弟テオへの手紙で、この画面を「夜、実際にガス灯の下で描いた」作品として説明し、水をロイヤルブルー、地面を藤色、街を青と紫、ガス灯を黄色、その反射を赤みのある金色から緑がかったブロンズへ移る色として書き分けています。つまり、水面の黄色い筋は単なる街灯の写実ではなく、人工照明が水によって色を変えながら広がる現象そのものを、色の対比として捉えた部分です。

フィンセント・ファン・ゴッホ『夜のカフェ』1888年、アルルのカフェ室内
『夜のカフェ』 フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年 油彩・キャンバス イェール大学美術館所蔵

「へ~」「そうなんだ!」朝の1分、ちょっと朝活

Q1. モネはなぜ同じ景色を何枚も描いたの?
Q2. ゴッホの『ひまわり』は何枚あるの?
Q3. 印象派という名前は誰が付けたの?

この3問の答えは、登録後すぐにメールで届きます。

登録無料・毎週火曜朝7:30ごろ・いつでも配信停止できます。

青と黄色の色彩をどう見るか

『ローヌ川の星月夜』は、青と黄色の対比を軸に見ると構造が分かりやすくなります。空と川には群青から青緑まで複数の青が使われ、街灯とその反射、星には黄色、橙、赤みのある金色が置かれています。寒色の広い面積の中へ暖色を点と線で差し込むため、光は実際以上に強く感じられます。

一方で、青は単一の「暗い夜の色」ではありません。ゴッホの手紙では空をアクアマリン、水をロイヤルブルーと区別しており、夜の中に複数の青を見いだしていたことが分かります。このように補色や近接色を隣り合わせながら画面全体を振動させる方法は、ゴッホの絵画を理解する重要な鍵です。厚塗り、筆触、黄色の使い方などは、ゴッホの絵の特徴で詳しく解説しています。

前景の二人は誰なのか

画面右下には、川岸を歩く二人の人物が描かれています。検索では「恋人は誰なのか」「ゴッホ自身と誰かを描いたのか」といった疑問も見られますが、二人を特定の実在人物と結びつける確かな根拠はありません。

一方、ゴッホ本人は作品を説明した手紙の中で、前景に「二人の小さな色のついた恋人たちの人物」を置いたと記しています。そのため、二人を恋人として描いた意図自体は一次資料で確認できます。ただし、それは「誰と誰か」まで特定できるという意味ではありません。人物名を想像で補うより、星空と街の灯りだけでは終わらない、人間の生活の気配を画面手前に置いた構成として見る方が作品に忠実です。

ゴッホの手紙とスケッチ

『ローヌ川の星月夜』は、ゴッホの書簡が作品理解に非常に役立つ例です。1888年9月末のテオ宛書簡には、ガス灯の下で夜に制作したこと、空・水・岸・街・ガス灯・反射をどの色で捉えたかが具体的に記されています。さらに10月初旬、画家ウジェーヌ・ボックに宛てた手紙には、この作品の構図を示すスケッチが添えられました。

このスケッチを見ると、完成作の核が早い段階で明確だったことが分かります。水平に広がる対岸、縦に伸びる反射、川岸の斜線、上空の大きな星、前景の人物という主要要素が簡潔な線で整理されています。作品を「感情の爆発」とだけ捉えるのではなく、構図を意識的に設計していた画家としてゴッホを見るうえでも重要な資料です。

フィンセント・ファン・ゴッホが書簡に描いた『ローヌ川の星月夜』のスケッチ
『ローヌ川の星月夜』書簡スケッチ フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年 ウジェーヌ・ボック宛書簡に添えた素描

『夜のカフェテラス』との関係

『ローヌ川の星月夜』と『夜のカフェテラス』は、どちらも1888年9月のアルルで制作された夜景です。二作品に共通するのは、黒一色で夜を描かず、青い夜と黄色い人工照明の対比によって暗さを表現している点です。昼間の光を失った後も、色彩の関係によって画面を成立させようとした一連の「夜の実験」と見ることができます。

ただし、構図は大きく異なります。『夜のカフェテラス』では、明るいカフェの外壁と石畳の遠近が鑑賞者を街路の奥へ導きます。『ローヌ川の星月夜』では、広い川面と水平線が中心となり、街の灯りは水面の反射によって空と地上の間をつなぎます。前者が街路空間の夜、後者が水辺の開けた夜を扱った作品だと考えると違いが明快です。

フィンセント・ファン・ゴッホ『夜のカフェテラス』1888年、アルルの夜景
『夜のカフェテラス』 フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年 油彩・キャンバス 80.7×65.3cm クレラー=ミュラー美術館所蔵

MoMA『星月夜』との違い

日本では『ローヌ川の星月夜』と、1889年の『星月夜』が混同されやすいのですが、制作地も時期も内容も異なります。『ローヌ川の星月夜』は1888年9月のアルルで、川岸の実景をもとに描かれた作品です。一方、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が所蔵する『星月夜』は1889年6月、サン=レミの療養院滞在中に制作されました。

画面の違いも明確です。『ローヌ川の星月夜』には川、水面の人工照明、都市の灯り、前景の二人が描かれています。1889年の『星月夜』では、渦巻くような夜空、大きな糸杉、山並み、村落が主要要素となり、現実の眺めをそのまま再現した作品ではありません。二作品を「青と黄色の星空」という共通点だけでまとめると、ゴッホがアルルとサン=レミで夜をどのように異なる方法で描いたのかが見えなくなります。

1889年作の制作背景、糸杉、渦巻く夜空、サン=レミの風景については、ゴッホ『星月夜』とは?で詳しく解説しています。また、主要作品を年代順に見たい方はゴッホの代表作も参考になります。

フィンセント・ファン・ゴッホ『星月夜』1889年、サン=レミの渦巻く夜空
『星月夜』 フィンセント・ファン・ゴッホ 1889年6月 油彩・キャンバス 73.7×92.1cm ニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵

『ローヌ川の星月夜』はどこで見られる?

『ローヌ川の星月夜』は、フランス・パリのオルセー美術館が所蔵しています。オルセー美術館は19世紀美術、とりわけ印象派・ポスト印象派の重要作品を多数所蔵する美術館で、本作もゴッホのアルル時代を代表する一点として収蔵されています。

ただし、美術館の所蔵作品は貸し出しや展示替えによって常に同じ場所に展示されるとは限りません。実物鑑賞を目的に訪問する場合は、出発前にオルセー美術館の公式コレクション情報と当日の展示状況を確認するのが確実です。ゴッホという画家の生涯全体から作品を理解したい方は、ゴッホとは|生涯と代表作もあわせてご覧ください。

関連記事

ゴッホ『星月夜』とは?|1889年MoMA所蔵作を解説
ゴッホとアルル|『ひまわり』『夜のカフェテラス』を生んだ町
ゴッホの代表作ランキングTOP10
ゴッホの絵の特徴|厚塗り・黄色・うねる筆触・浮世絵
ゴッホとは|どんな画家?生涯と代表作を解説

登録無料 毎週火曜 朝7:30ごろ 3つのQ&A

福福堂編集部の無料メールマガジン

朝の1分で、美術の「へ~」を3つ。

美術に詳しくなくても楽しめる3つのアートQ&Aを、毎週火曜朝7:30ごろ無料でお届けします。

・モネはなぜ同じ景色を何枚も描いたの?

・ゴッホの『ひまわり』は何枚あるの?

・印象派という名前は誰が付けたの?

この3問の答えは、登録後すぐにメールで届きます。

登録に必要なのはメールアドレスだけです。配信停止はメール末尾のリンクからいつでも行えます。

書画家・伊藤一樹

東京都・埼玉県限定 2026年12月15日までの開催分

講演歴17年以上・全国500回以上。 伊藤一樹の講演会を、講演料無料で。

中学校・高校・教育委員会から企業研修まで。心の不調を乗り越えた書画家・伊藤一樹が、実体験をもとに「あなただからこそできることがある」を語ります。

  • 講演時間25~70分
  • 約5分の書画ライブ可
  • 会場・日時未定でも相談可
講演料
0円

福福堂が講演料を負担します。主催者様は、岐阜県恵那市から会場までの交通費実費のみご負担ください。

お問い合わせ・詳細・申込はこちら

学校行事・企業研修・安全大会・健康・人権・福祉研修などにご相談いただけます。

タイトルとURLをコピーしました