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日本で見られるデューラー作品|所蔵美術館と版画・素描を紹介

アルブレヒト・デューラーの作品は、日本国内でも見る機会があります。ただし、デューラーは版画作品が多く、所蔵館が作品を常時展示しているとは限りません。とくに紙作品は保存上の理由から展示期間が限られ、同じ美術館でも時期によって公開作品が変わります。

2026年10月時点で公式コレクションを確認すると、国立西洋美術館、町田市立国際版画美術館、新潟県立近代美術館、北海道立近代美術館、東京富士美術館などにデューラー作品が所蔵されています。代表的な銅版画だけでなく、『黙示録』『小受難』などの木版画連作、日本では珍しい大型の《皇帝マクシミリアンの凱旋》まで、所蔵内容にはかなり幅があります。

デューラーの生涯や代表作を先に整理したい方は、アルブレヒト・デューラーとは|北方ルネサンスを代表する画家・版画家を解説もあわせてご覧ください。

日本でデューラー作品を所蔵する主な美術館

国内で確認できるデューラー作品の中心は、エングレーヴィングと木版画です。油彩画の代表作が日本に集中しているわけではありませんが、版画家デューラーの力量を知るうえでは、むしろ質の高い所蔵があります。国立西洋美術館には《アダムとイヴ》《騎士と死と悪魔》《メレンコリア I》《書斎の聖ヒエロニムス》などがあり、北海道立近代美術館は『小受難』のまとまった連作を所蔵しています。

版画は同じ図像から複数の刷りが存在します。そのため、作品名が同じでも、紙、刷りの時期、版の状態、来歴などが異なる場合があります。国内所蔵を確認するときは、「同じ作品名だから同一の1点」と考えず、美術館ごとの作品情報を見る必要があります。

国立西洋美術館|三大銅版画を含む充実した版画コレクション

東京・上野の国立西洋美術館は、日本でデューラーの銅版画を見たい人にとって有力な所蔵館です。公式コレクションには《アダムとイヴ》(1504年、エングレーヴィング、24.8×19.0cm、所蔵番号G.1980-0001)、《騎士と死と悪魔》(1513年、エングレーヴィング、24.6×19.0cm、G.1998-0053)、《メレンコリア I》(1514年、エングレーヴィング、23.9×18.9cm、G.1998-0052)、《書斎の聖ヒエロニムス》(1514年、エングレーヴィング、24.9×18.9cm、G.2003-0117)などが登録されています。

《騎士と死と悪魔》《メレンコリア I》《書斎の聖ヒエロニムス》は、一般にデューラーの「三大銅版画」と呼ばれる作品群です。三点をまとめて知りたい方は、デューラーの三大銅版画で作品ごとの違いを整理しています。

国立西洋美術館はこのほか、『銅版画受難伝』や『大受難伝』なども所蔵しています。2026年10月の確認時点では、『銅版画受難伝』の《復活》(1512年、エングレーヴィング、11.4×7.4cm、G.1989-0099)が「展示中」と案内されています。一方、《アダムとイヴ》《騎士と死と悪魔》《メレンコリア I》《書斎の聖ヒエロニムス》は公式作品ページで「現在は展示していません」と表示されています。所蔵作品が多い美術館ほど、すべてが同時に見られるわけではない点に注意が必要です。

アルブレヒト・デューラー《騎士と死と悪魔》1513年のエングレーヴィング
参考図:《騎士と死と悪魔》/アルブレヒト・デューラー/1513年/エングレーヴィング/24.8×19.0cm/ナショナル・ギャラリー・オブ・アート所蔵(国立西洋美術館所蔵品とは別刷り)

町田市立国際版画美術館|『黙示録』の《四人の騎者》

東京都町田市の町田市立国際版画美術館は、版画を専門とする美術館です。名品紹介では、デューラー『黙示録』より《四人の騎者》を所蔵作品として公開しています。制作・初版刊行は1498年、再版刊行は1511年、技法は木版、寸法は393×280mmです。

四騎士が画面を斜めに突き進み、人々を圧倒する構図は、デューラーの木版画を代表するイメージの一つです。細部を刻み込む線の密度だけでなく、人物と馬の動きを一つの奔流にまとめる構成力が際立っています。町田市立国際版画美術館は過去の展覧会でもデューラー作品をたびたび紹介していますが、所蔵していることと現在展示していることは別です。訪問時には開催中の展覧会と出品リストを確認するのが確実です。

アルブレヒト・デューラー《黙示録の四騎士》1498年の木版画
参考図:《黙示録の四騎士》/アルブレヒト・デューラー/1498年/木版画/版面39.5×28.5cm/ナショナル・ギャラリー・オブ・アート所蔵(町田市立国際版画美術館所蔵品とは別刷り)

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新潟県立近代美術館|《メレンコリア I》と『黙示録』

新潟県立近代美術館の「世界の美術」コレクションには、デューラー《メレンコリア I》が含まれています。1514年、エングレーヴィング、23.8×18.5cm。国立西洋美術館所蔵の同名作品とは寸法も異なり、別の所蔵品です。

同館は《メレンコリア I》だけでなく、『黙示録』の《四人の騎者》《書物を食べるヨハネ》など複数のデューラー版画を所蔵しています。過去のコレクション展ではデューラー作品をまとめて展示した実績もあり、版画史の流れの中でデューラーを位置づける収集方針が見えます。ただし、過去に展示された作品が2026年10月現在も展示中であることを意味するものではありません。

《メレンコリア I》は、幾何学、多面体、砂時計、秤、魔方陣など多くのモティーフが密集する作品です。国内に同じ図像の所蔵が複数あるからこそ、版画では「作品名」だけでなく、どの美術館のどの刷りを見ているのかを確認する面白さがあります。

デューラー《メランコリアI》1514年。翼のある人物、魔方陣、多面体、測定器具が描かれたエングレーヴィング
参考図:《メランコリアI》/アルブレヒト・デューラー/1514年/エングレーヴィング/23.7×18.6cm/ナショナル・ギャラリー・オブ・アート所蔵(新潟県立近代美術館所蔵品とは別刷り)

北海道立近代美術館|『小受難』をまとまって所蔵

北海道立近代美術館の所蔵作品データベースでは、アルブレヒト・デューラーで38件が確認できます。中心となるのが木版画連作『小受難』で、《原罪》《楽園追放》《受胎告知》《最後の晩餐》《弟子の足を洗うキリスト》《十字架を担うキリスト》《昇天》《最後の審判》などが登録されています。

たとえば《原罪》は1509年、木版・紙、12.6×9.7cm。《最後の晩餐》は1509~11年、木版・紙、12.6×9.9cmです。さらに《聖エウスタキウス》も所蔵されており、1501年、エングレーヴィング・紙、35.7×25.9cm。小型の連作から密度の高い大型銅版画まで、デューラーの版画制作を複数の角度から見ることができます。

紙作品は展示替えが前提になるため、38件の所蔵作品を一度に鑑賞できるわけではありません。北海道立美術館の作品データベースも、画像の二次利用については各所蔵館への確認を求めています。所蔵情報と画像利用条件は別々に確認する必要があります。

東京富士美術館|《皇帝マクシミリアンの凱旋》

東京富士美術館が所蔵する《皇帝マクシミリアンの凱旋》は、国内のデューラー所蔵を考えるうえで見逃せない作品です。公式データベースでは、1609年刷(1518年彫版)、木版・紙、全体45.0×228.1cm、各紙45.0×24.8~32.3cmとされています。

アルブレヒト・デューラー《皇帝マクシミリアンの凱旋》1609年刷、東京富士美術館蔵
《皇帝マクシミリアンの凱旋》/アルブレヒト・デューラー/1609年刷(1518年彫版)/木版、紙/45.0×228.1cm/東京富士美術館

この作品で注意したいのは、デューラーの生前に刷られた1点として扱わないことです。図像のもとになる下絵はデューラーが1518年までに制作しましたが、東京富士美術館所蔵品は公式に「1609年刷」と明記されています。版木から刷られる版画では、制作年、彫版年、刊行年、刷りの時期が一致しないことがあります。

同館の収蔵品データベースでは、この作品のデジタル画像についてCC0が表示され、商用を含め自由利用できることが明示されています。原作品の著作権保護期間が満了していることと、デジタル画像の利用条件が別に整理されている点も、版画画像を扱う際の参考になります。

「所蔵」と「現在展示中」は別に考える

デューラー作品を日本で見たい場合、最初に確認したいのは所蔵館ではなく、その時期の展示作品です。版画や素描は光に弱く、油彩画のように長期間常設することが難しいため、展示替えが頻繁に行われます。公式コレクションに作品ページがあっても、実際の展示室に出ていないことは珍しくありません。

国立西洋美術館のように作品ページ上で「展示中」「現在は展示していません」と明示する館もあります。一方、コレクションデータベースが所蔵情報を示すだけの館もあります。遠方から訪れる場合は、展覧会ページ、出品リスト、コレクション展示の案内まで確認すると安心です。

同じ作品名でも「同じ1点」とは限らない

デューラーの版画を日本の美術館で見るとき、絵画とは違う楽しみがあります。同じ版木・版から複数の紙に刷られるため、《メレンコリア I》のような著名作が複数の国内美術館に所蔵されることがあります。さらに初期の刷り、後刷り、異なるステート、後世の復刻、ファクシミリなどが混在する可能性もあります。

その違いを確かめる手がかりになるのが、制作年だけでなく、技法、寸法、所蔵番号、来歴、標準カタログ番号です。国立西洋美術館の作品ページではBartsch、Meder、Hollstein、Schochなどの標準文献番号も掲載されており、作品同定の精度を高めています。

木版、銅版、石版など版画技法そのものの違いを整理したい方は、版画とは?種類・技法・有名作品を木版・銅版・石版・浮世絵まで解説をご覧ください。デューラーが活躍した時代背景は、北方ルネサンスとはで詳しく紹介しています。

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