木口木版と赤池ももこ
輪切りした木のいわゆる『切り株』に当たる面を彫るのが『木口木版』です。木口木版画の輪郭は上の写真のようにいびつな円となります。木の胴回りの形が表れるわけですね。赤池ももこ作品でも時々ありますが、割れ目が生じていることもあります。木にひび割れがあるからです。その自然の形を作品に活かす、もしくはお構いなしに世界観を拵えるのが木口木版作家の作品の魅力であり腕の見せ所です。
赤池ももこの彫る木口木版の極細線は、閉じられた世界の多感な少女たちを巧みに表現しています。髪の長い少女と熱帯雨林気候下の植物のように生い茂る植物が高温湿潤な世界を思わせます。この輪切りの木口木版の世界にいて何処にも行く気配のない少女たちは、どこからやって来てなぜここにいるのだろうとずっと考えています。
赤池ももこの作品
木口木版画
銅版画
赤池ももこ展【-8】開催時のエピソードをひとつ。展示タイトルの【-8】とはイギリスとの時差です。イギリスを旅した赤池ももこ氏がその日々を版画にして発表した展覧会でした。展示されたのは美術館の風景、地下鉄の風景、さながら旅行記のようなユニークな作品たちです。私のおすすめは『copper.E』。フォークの雨が、空押しされています。展覧会の締め切り間際の画家が小さなフォークを手作りし始めたときには「何か別のお仕事の締切でもあるのかしら・・・?!」と思いました。それが版画作品の空押しの道具になるとは思いもよらず。驚き感動しました。アーティストは予想もしないことをするものですね。
プロフィール
<受賞歴>
2012年 第79回 日本版画協会版画展 賞候補
2012年 第89回 春陽展入選
2012年 第57回 CWAJ現代版画展入選
2012年 第32回 カダケス国際小版画展入選(スペイン) 賞候補
2017年 第84回 日本版画協会版画展入選
2017年 KENZAN2017 C-DEPOT賞受賞
2017年 第6回 東京国際ミニプリント・トリエンナーレ入選
2017年 第24回 鹿沼市立川上澄生美術館 木版画大賞 入選
2019年 Mini Print Kazanlak 2019入選(ブルガリア)
2019年 Mini Print International of Cadaques2019入選(スペイン)
2019年 National original print exhibition2019入選(イギリス)
2019年 Print International 2019 入選(イギリス)
2019年 アワガミ国際ミニプリント 賞候補
2019年 萱アートコンペ2019 入選
2020年 第87回 日本版画協会展 入選(準会員推挙)
2020年 第19回 南島原市セミナリヨ現代版画展 長崎新聞社賞
2020年 第二回TKO国際ミニプリント2020 入選
2022年 第一回極小版画コンテスト 文房堂賞
<所 属>
C-DEPOT
日本版画協会 準会員
<収 蔵>
多摩美術大学美術館(2018年)
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