小柳 優衣 Yui Koyanagi

小柳 優衣 Yui Koyanagi 概要

1988年生まれ。福岡県出身。滋賀県彦根市在住。
大学時代に『銅版画』の道へ進む。銅版画家として人気作家となった頃、銅版画の技法をベースとして自ら新しい技法を用いて制作する『腐蝕銅レリーフ』という作品を生み出す。腐蝕銅レリーフは作者の哲学である『営みながら朽ち、朽ちゆくなかで作り出される』と技法・素材の面で親和性が高い。
建物の外装などで見かける浮彫の銅板レリーフとはまた異なる技法で制作される腐蝕銅レリーフは独特の魅力を持っている。腐蝕銅レリーフはそれ自体が1つの作品であるため版としての性質はなく、レリーフに近い存在といえる。

腐蝕銅レリーフ作品

「promised boundary」
腐蝕銅レリーフ/450×350mm
「水槽の記憶」
water bowls /腐蝕銅レリーフ/200×150mm
「奇妙なかくれんぼ」
hidden and no seeker /腐蝕銅レリーフ /150×200mm

腐蝕作品展―蝶の雫―より 2019年

「ひみつのいりぐち」
インク/銅 150x200mm
「わすれないうた」
インク/銅 150x200mm
「赤ちゃんの吐息」
インク/銅 100x100mm
「希望」
インク/銅 100×100 mm

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「やどりぎのたま」
腐蝕銅版画435x340mm
jasmine
腐蝕銅版画 インク/ヨシ紙 8×10cm
外界と意思

銅版画技法 エッチング

エッチング技法 制作の流れ

  1. 防蝕コーティングした銅板に、ニードル針を使ってイメージを描いてゆく。
  2. 描き終わった銅板を酸の中に浸けて、コーティングを除去された部分が腐蝕させる。
  3. 必要なだけ腐蝕が進んだら酸とコーティングを洗う。
  4. 銅の腐蝕された部分にインクを詰め、紙をのせ、プレス機に通してイメージを紙に移しとる。エッチングは深い腐蝕や繊細な凹凸、かすかなキズまでも紙に移しとることができる版画の技法である。
poppiness-score
腐蝕銅版画-インク-ハーネミューレ-雁皮29-5-20cm
Gene Note
エッチング・アクアチント・スピットバイト
・手彩色 ハーネミューレ・雁皮紙
entrance key 腐食銅版画 8x10cm

油彩の技法

完成形をイメージしながら描く油彩の描き方は、版画家としてのプロセスに近い。白亜地を厚く作り、主題はエングレービングしてそこに絵具を填める。油絵具は薄く薄く何層にも塗り重ねるが、決して濁らない。明るく透明感がありながら落ち着いた印象になっておりタブローとしての存在感を感じさせる。

adagio tea oil on canvas S3
artlessness oil on canvas M6
espressivo oil on canvas M6

どこか象徴的な蝶や花、街、ハイヒールや鍵・・・・それらの作品の奥行きは、暗喩によってより深められている。幼い頃からピアノを愛していたため、モチーフには音楽を意識したものが多い。

筑波大学で彼女にフランス語を教えた言語学者の先生は、彼女の絵から感じるものを「共感覚」とおっしゃったが、大変的確な指摘であると思う。音符は踊るうちにそれ自体が弾けて花になる、色になり、鑑賞者の右脳を幸せ色に染める。あたかも音楽を聴いているかのごとく脳が刺激される。小柳優衣が自己の進路を決定する上で、ギリギリまで音楽と美術の路を岐けられなかったことからも分かるように、彼女のなかではこれら二つの分野は、もともと純然と分けて考えるものではないのであろう。

また作品のなかでしばしば見られる、モチーフが溶けていくようなイメージ、これらは生命には欠かせない水を表す。生と死のプロセスをつかさどる水は、また破壊と創造の象徴でもある。彼女はこのイメージを表現するには銅版画の技法が最適だと直感し、大学でこの技法を研究した。綿密な腐蝕時間の調整により、その「溶けていくイメージ」を生み出している。

インクは春蔵絵具という日本最古の絵具メーカー産セピア色を用いている。

 (福福堂)

小柳優衣さん インタビュー記事

こちらから御覧ください。

メディア掲載

新聞・雑誌など

ブレイク前夜 小柳優衣

小柳さんとの最初の出会いはもう9年前。
銅版画の作品ファイルを拝見すると、水に溶けていくイメージがとても印象的な作品群でした。
あるときは音符が水に溶けていき、あるときは亀がゆっくりとたゆたい。
花の作品であっても、そこには流れる水が感じられました。


それから彼女と共に年月を重ねるうちに、彼女の思考特性がとても不思議なことに気が付きました。恐ろしく論理的であり鋭い言語性を持つ一方で、抽象的な非言語イメージ。それらは恐らく小柳さんにしか分からない生命の秘密だったり、産み出す性としての慈愛と破壊であったり・・・。それらのアンビバレンツなものたちが、小柳さんという作家の中に住んでいると。
誰しも少しはそういう面はもっているとは思いますが、彼女の場合、まるで彼女自身のなかにキリスト教でいうところの”契約の神”と曖昧模糊としながら何もかも包み込む日本の神が同居しているような混沌さを峻烈に抱いています。


それらの底に流れる”水”は、生命の源であり、破壊であり創造であり、奈落の底に突き落とすような厳しさを見せつつすべてを包みこんでくれる、そのような尊さと神秘性を感じます。
小柳さんが銅版画という技法を選び、今、またそれだけに縛られず腐蝕を通じて朽ちていく銅の表現に魅せられているのも、なにか自然な流れのように感じます。


今年5月に銀座三越にて開催された個展での、このたびの試みは大反響を生みました。その個展がきっかけで「ブレイク前夜」に出演し、大変うれしく思います。これから始まる小柳さんの物語をずっと見ていけることを私もとても楽しみにしております。

福福堂

小柳 優衣さんのプロフィール

小柳 優衣 / Yui Koyanagi

福岡県北九州市生まれ
私立自由ケ丘高等学校 卒業
折尾美術研究所 卒業
筑波大学 芸術専門学群 美術専攻 特別カリキュラム版画 卒業

〈 主な活動歴 〉
2022 個展「小柳優衣 腐蝕作品展 their place」銀座三越
    神戸アートフェスタ2022 神戸メリケンパークオリエンタルホテル
2021 個展 OTO gallery
    個展「鱗の唄」福福堂 @Hiltopia Art Square
2019 個展「蝶の雫」銀座三越
    個展「THE LIGHT」FCA
    学園前アートフェスタ 奈良市学園前エリア
2017 個展「錆色の森」FCA
2016 GINZA ART FESTA 松屋銀座
2015 ART OSAKA 2015 ホテルグランヴィア大阪
    個展「小柳優衣 銅版画油彩画展」 あべのハルカス
    カレンダー原画展「心ここに暦とともに」 銀座伊東屋 K.Itoya
2014 アールデビュタントURAWAの足跡 伊勢丹浦和店
2013 個展「fleurir!」 OTO gallery
    個展「Gene Note」 伊勢丹新宿本店
    個展「New Melody」 ギャラリー上原
2012 珠玉の女性アーティスト展 銀座三越

    lllline@shigagin 滋賀銀行長浜北支店
    個展「時雨蝶」 伊勢丹浦和店

〈 CV 〉

■Education
2010 Art & Design Special Curriculum Printmaking, Tsukuba University, Ibaraki
2006 ORIO Institute of Art and Design
    Jiyugaoka high school

■Solo exhibitions
2021 Solo exhibition, OTO gallery, Osaka
    Song of scales, Hiltopia Art Square, Tokyo
2019 Butterfly Drips, Ginza Mitsukoshi, Tokyo
2019 THE LIGHT, FUJIMURA CONTEMPORARY ART, Yokohama
2017 Rusty Forest, FUJIMURA CONTEMPORARY ART, Yokohama
2016 Until the time is filled, Nagano Tokyu, Nagano
2015 copperplate Prints and oil paintings, Abeno Harukas, Osaka
2013 New Melody, Gallery Uehara, Tokyo
    Gene Note, Isetan Shinjyuku, Tokyo
    fleurir !, Oto Gallery, Osaka
2012 Shigure-cho, Isetan Urawa, Saitama
    lllline, Gallery Uehara, Tokyo
    lllline, THE SHIGA BANK Nagahama, Shiga
2011 the traces of corrosion, Gallery Uehara, Tokyo
2010 TRIUMPHAL ARCH, la fontaine, Fukuoka

■Artfair
2022 Kobe Art Festa 2022
2019 Gakuen-mae ART FESTA 2019, Nara
2013ー2015
    ART OSAKA, HOTEL GRANVIA OSAKA,
2011 International Artexpo New York 2011, Pier94, New York

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