三沢厚彦「ANIMALS」を見に千葉市美術館へ

三沢厚彦「ANIMALS」を見に千葉市美術館へ

以前から好きでしたが、今回まとまった作品と接して感じたのは、「やっぱり好き!」ということ。

現実には、色々な問題があり悩みがあり、人生を憂う毎日ではあるものの、三沢厚彦の木彫作品の前ではニヤリと笑ってしまい、束の間現実を忘れられます。

なんという表情!

なんという存在感!

他人の人生の1ページに彩を与えられるのは、やはりアートの力だと感じますね。

作家の趣向だと思うのですが、従来の美術館ではちょっと考えられないほど、作品とお客さんの距離が近い展示の仕方になっています。「作品には手を触れませんように」とクドイくらい注意を受けて中に入ったのですが、確かに触りたくなるような展示方法です。

また小動物が、会場の隅にちょろっと飾られていたりするのですが、お客さんが大作を見るために後ずさりしたときに、蹴っ飛ばしてしまわないだろうか・・・・と余計な心配をしてしまいました。きっと作品にかかる損害保険料も高いんだろうなああ・・・。

しかし、この距離感がとても楽しくてクセになりそう。

1 とぼけているようで神聖を感じさせるクマたち

写真撮影OKな部屋。

それぞれのクマの大きさが、種の特長を表していて楽しい。大きな動物は大きく、小さな動物は小さく作られているそうです。

クマたちの少し離れ気味の目、何かを掴もうと手を差し出しているかのようなポーズ、そしてとぼけた表情に反して、意外と鋭そうな爪のバランスがツボです。

この熊手のような爪の鋭さが、熊が獣(アニマル)であることを思い出させてくれ、そこに霊性を見出したアイヌやマタギの心をも感じさせました。とぼけているようでいて決して私たちの言うままにはならない、そしてそのサイズ感もあり、人間を超越した神聖をも感じさせられました。

2 平面作品も良い!

こちらは平面のクマたち。立体も良いのですが、平面もめちゃ良いのですよ。

どちらの表現も素敵で、まさにMulti Dimensions (今回の展覧会のコピー)でした。

3 彫刻家のアトリエつながり

今回の展覧会場では、作家のアトリエのイメージを再現した部屋があったので、興味深く拝見しました。音楽がお好きなのでしょう。ギターやアンプがあったりで、作家のアトリエとしての雰囲気がよく表れていました。展覧会期間中はそこに作家さんが現れて制作もしているそうです。たまたま美術館を見ていて、作家本人の在廊に遭遇できた方はとてもラッキーですね。

彫刻家のアトリエといえば、たまたまだったのですが、先月、群馬県立館林美術館へ行き、フランソワ・ポンポンのアトリエをイメージした部屋を拝見して来ました。

フランソワ・ポンポンは動物の彫刻で有名な作家で、20世紀始め頃まで活躍しました。群馬県立館林美術館は彫刻のコレクション67点を所有しています。

画像はオルセーにあるポンポンのシロクマ(wikicomonnsより)

それにしても、ポンポンのシロクマと今回の三沢厚彦のクマと、やはり文化の違いを如実に感じます。ポンポンの彫刻は大理石やブロンズなのに対して、三沢厚彦の彫刻は樟(くすのき)を用いた木彫です。そしてすべすべの地肌ではなく、木喰や円空仏を想わせるようなノミの痕がついたもの。

古来より日本人は木にも霊性を見出してきました。それらを寄木にしてダイナミックな命を吹き込んだ作品は、日本の歴史と現代の感覚、自然と趣向のベストバランスの上に成り立っているのだなあ、と改めて感じました。

4 千葉市美術館はおすすめアートスポット

写真は、千葉市美術館の1F、入場料無しで入れるエリアです。

この建物は、戦前の銀行を活かして美術館に再生したもので、ところどころに歴史を感じさせる設えが残っています。千葉市美術館は、11Fのレストランも美味しいし、アートショップも充実しているし、一日ゆっくりと楽しめるアートスポットです。東京ほど混んでないので、人混みに疲れる心配もなし。

今回の展覧会は、現実に存在するANIMALSから、この世には存在しないキメラや想像上の動物たちまで、構成も多面的(Multi Dimensions)な内容でした。美術館が所有する長谷川潔の作品からインスパイアされた作品もあり、美術館の企画力も感じられ見どころ沢山。

9月10日(日)まで開催しています。お近くの方、ぜひお出かけください。

三沢厚彦「ANIMALS」

(ライター晶)

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