【鑑賞レポート】久しぶりにお能に行ったらビックリした話│はじめての矢来能楽堂 special 能「土蜘蛛」│新宿区神楽坂

むかーしむかし若かりし頃、神楽坂の近くに住んでいたことがありました。休日にはふらふらと散歩したりしたりして、矢来町にある能楽堂には何度か行ったことがあったのですが、引っ越ししてからはなかなか縁遠くなってしまってました。この春、急に思い立ち矢来能楽堂で開催するお能を見に行って参りました。


今回の演目は「土蜘蛛」
開場時間に能楽堂に到着したら・・・・

なんとワイルドな表情の土蜘蛛さんがお出迎え。
かっこいい~。

矢来能楽堂は、1930年に今の場所に建設されたものの戦争で焼失し、1952年に再建したそうです。2011年には国指定の登録文化財となっています。このような由緒ある建物を維持管理していくのは並大抵のことではないでしょう。このたびも大規模修繕が終わったところであると理事長の観世喜正氏が語っておられました。


私がチケットを取ったときには、もう正面席や脇正面席が満席で、後ろのお座敷になってしまったのですが、なるほど会場は満員御礼でした。お座敷は靴を脱いで上がり、畳の上に置いてある椅子に座る形式です。昔はそこが一等席だったと観世氏はおっしゃてましたよ。

今回の公演は、普及公演「はじめての矢来能楽堂スペシャル」という企画で、初めてお能を見る方に対して至れり尽くせりのサービス公演でした!まず入口で希望者にはタブレットが配られます。そこには今回のストーリーが子供さんにも分かるように挿絵入りで紹介されており、それを読んでいるだけで楽しい。事実、周りは家族連れが多く、ワイワイとした雰囲気でした。

土蜘蛛は妖怪退治ものの分かりやすいストーリーです。酒呑童子退治でも知られる源頼光が病で臥せっている深夜、頼光の床に怪しげなお坊さんがやってきて、いきなりそやつが妖怪土蜘蛛!に変身し、蜘蛛の糸を投げながら襲い掛かってくる。「おのれバケモノめ!」と頼光が刀で応戦すると妖怪は消え失せ・・・・・。頼光が家来と共に血の跡を捜索していくと、大きな塚を見つけます。皆で塚を崩すと中から妖怪土蜘蛛が出てきて、糸を吐きながら襲い掛かってきます。しかし最後は頼光たちにめっためった切りつけられ、あはれ土蜘蛛は退治されてしまった!というお話です。

妖怪土蜘蛛が放つ糸は、こんな感じ。
くらえ~!しゅぱーっ!

写真が下手で申し訳ない。ちなみに公演中はもちろん撮影禁止です。この写真は、公演終了後のフォトセッションで撮影したもの!
フォトセッションというワードとお能が頭の中でうまく繋がらなかったので、公演後に土蜘蛛さんが単独でスタスタと出てきて理事長のディレクションで次々とポーズを決めていく様を見ながら、なかなか理解が追いつかなかったです。観客はみな夢中で撮影してました(笑)

土蜘蛛は、室町末期に作られた作者不明の謡曲です。
舞台となった土蜘蛛の塚は、北野天満宮一の鳥居西、東向観音寺内にあったという説や北区紫野十二坊町の上品蓮台寺にあったという説があるそうです。土蜘蛛さんが放つこの糸は千条の伝というそうで、鉛の芯に5~9mの雁皮紙を張り合わせて固く巻き、2㎜くらいに細かく刻んで作られるそうです。これ公演に合わせて作るのでしょうかね。それとも業界専門のカタログとかで販売しているのでしょうか・・・いろいろ想像してしまいます。


それにしてもこのたびの公演は、能という伝統芸能を一般の方に親しみを持ってもらえるようにという努力を大変感じました。前述のタブレットは公演が始まると詞章(能で謡われる言葉)が表示されるようになっています。耳だけで聞くと少し分かりにくい昔の言葉も、目視で補助すると五感での理解に繋がりやすいです。フォトセッションも今どきのSNS世代にはマッチしていて、より「普及」に繋がりますね。思い切って曲目を一つだけに絞って、子供さんが飽きないようにしているのも良い試みです。


閉じた世界は衰退に繋がります。どの世界でも新参者には門戸を広げないと、業界がゆるやかな死を迎えてしまいます。時代の声を聞きながら、新しいファンをエデュケーションしていくこの試みは、本当に素晴らしいと感じました。子供の頃、このような公演を見ておくと成長してからも気軽に能楽を見に行くようになってくれるでしょう。


秋には、「鐵輪」 (ちょっと怖い「丑の刻参り」ですよ!) が演目の普及公演があります。ぜひお子様と一緒に能楽の夕べを過ごしてみてはいかがでしょうか。
◆矢来能楽堂 https://yarai-nohgakudo.com/archives/11966

(ライター晶)

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