文字をもたない民アボリジニの生きるために必然のアート
オーストラリアの中央砂漠には、5万年前と変わらぬ暮らしをしている人たちがいます。
かつてオーストラリア大陸全土で生活していたアボリジニ(オーストラリアの先住民族)たちは、250年前のキャプテンクック上陸と共に、中央砂漠へと追いやられる運命を辿りました。
彼らは文字を持たず、必要な知恵・記録・伝達・伝承・創世神話などを歌や踊りと儀式、そしてアートでコミュニケ―トしてきました。小石、鳥羽、動物の脂肪や岩を砕いたもので、地面、岩、身体などに描いてきました。そして用が済むとそれを消し去っていました。必要なものを必要な相手に必要なときに描く、いわば必然のアートだったのです。
1970年代、イギリスの美術教師が彼らにキャンバスとアクリル絵具を渡し、描いてみるように言ったところ、とても不思議な、でも魅力的な文様がいくつも生み出されました。
彼らの描いたものは、最初は文化人類学者の博物学的な研究対象でしたが、欧米で「これは現代アートだ」と認識されてから美術のジャンルに入り、今や世界中のコレクターから注目されるアートとなりました。
アボリジニたちは狩猟採集民族。定住しない彼らにとって大地は何よりも大切な母なる存在。水道でもあり食糧庫でもあります。水場に辿り着けない=死を意味する彼らにとって、生きるための知恵の伝達は大切なミッションです。
ライター・晶
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