生物と無生物のあいだ

天はニ物を与えず・・・という言葉があるけれど、実際には、何かに秀でている人は、大抵他の何かにも秀でている。手塚治虫や渡辺淳一が医師だったことは有名だし、弁護士で法廷小説を書く人も多い。松任谷正隆は、音楽のプロデュースだけではなく車の評論もし、川島なおみは、ワインを語る・・・・(我ながらしょうもない喩えばかりですみません。)

今更ながら、生物学者である福岡伸一の「生物と無生物のあいだ」を読んで衝撃を受けた。
福岡伸一のこの本は、けっこう前のベストセラーだったのは知っていたんだが、先日、百貨店での展覧会期間中、昼休みに本屋さんに行ったら山積になっていたので買ってみた。
読み始めたら面白い!
理系科目は大の苦手だった(共通一次(←古いけど)で、数学49点しか取れなかった身)私にも分かりやすいように、ドラマチックに、レトリックたっぷりに「いのち」について語ってくれる。

生命のメカニズムに感動する箇所が沢山。
信じられないような奇跡で我々の生命って維持されているんですね。

特に感動した箇所ふたつ。

DNAの構造って二重らせんになっているのは有名だけど、そのお互いがお互いのミラー保全システムになっていて、片方の情報が抜け落ちた場合には、もう片方が自動的に他方に情報をコピーするんだって。。。。すごいバックアップシステムだ。知らなかったです。

もう一つは、今流行のインフルエンザにも関わるけれど、ウイルスについて。
漠然とウイルスって、単細胞生物だと思ってました。
でも、生物ってどう定義するかにもよるけれど、またそこが重要ではあるんだけど、ウイルスは同じ種類のものなら、大小の大きさはなく、すべて全く同じ風貌をしているそうです。あるものは正二十面体、あるものは繭状ユニット・・・・。

子供の頃授業で、シャーレと顕微鏡で水槽の水を見たりしましたよね、その時、何やらアメーバが大小うようよと蠢いていた記憶がありますが、ウイルスってのも、そんなもんだと思ってました。
そしたら、そんなのでは全然なくって、もっとメカニカルに均一らしい。

そしてそいつらは、栄養を摂取することもなく、排泄もせず、呼吸も代謝もしないんだそうです。
極めつけは、特殊な方法で精製をすると、結晶化するということ。結晶化ということは殆ど鉱物に近いと。そんなんで「生命」と言えるのかって話ですよ。

ショッキングでしたね。
知らなかった。
なんだかこういう生物学の分野を覗き見ると、それに比べて医学っていうのは、実はえらく演繹的で古典な方法なのではないかとちょっと思ってしまいました。

と同時に、この生命のメカニズムを作った神は凄すぎる!
人間の全英知を持ってしても、生命のメカニズムのように、複雑で無駄が無くて、そして柔軟なシステムは創れません。
本当に合理的で美しい。

そしてこんな本を書ける福岡伸一は、素晴らしすぎ。
所々に入る挿話が印象的すぎて、視覚的な情景もありありと浮かび、生物学者というのは、実はロマンチストなんだ、というのを分からせてくれた一冊でした。

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