11月の中原亜梨沙の個展から
「ともに歩く道」雲肌麻紙・岩絵具他 30x116cm
この絵の前で動けなくなっている方が何人もいらした。
火焔のような髪。
強い意志と憂いを帯びた瞳。
鑑賞者、その人そのものを見通すような眼差し。
中原亜梨沙の作品としては珍しく、膝下まで描かれており、すらっとした肢体が印象的である。
モデルは女性なのだが、どこか中性的なイメージが阿修羅をも思い出させる・・・・。
中原亜梨沙は、ずっと生きようとする力を描いてきた。
先週末、NHK「新映像の世紀」を見た。
第一次世界大戦の敗戦から戦争賠償金で苦しむドイツ。ヒトラーが台頭してきて、やがて国民の圧倒的支持を産む。そしてヨーロッパ周辺諸国に攻め入り占領する様子。
ユダヤ人の大量虐殺。
ドイツ軍がレニングラードを攻撃している様子。市民は白旗を挙げると、ソ連から裏切者と撃たれ、挙げないとドイツ軍から狙撃たれた。
うっすら理解しているつもりだった近代史も、モザイクもかかっていない、放送禁止と思えるような映像で見ると、心臓に突き刺さるようで、クリスマスを前にどこか浮かれていたのが、頭を殴られたような気持になった。淡々とした解説がそれに拍車をかける。
ヒトラーが最後に言ったという、「自分と共にナチスの考えは無くなるが、100年もすれば、また同じ考えが生まれることだろう。」という言葉に戦慄を覚える。
第二次世界大戦が終わっても、後から後から戦争や紛争が出てくる。民族や宗教イデオロギーの違いにより人は人を侵す。
太古から変わらない。
何度も繰り返される。
そして天災も。
予想もつかないことが次から次へと起き、今日の平穏は明日の保証が無い。
今、生きていることが幾重にも重なった奇跡なのかもしれない。
何があっても生きていく。
命の輝きは短いものだけれど、たとえ明日が見えなかったとしても、それでも精一杯今日を生きる。
今日、ケーキを買って家路を辿れる幸運に感謝して・・。
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