韓国人画家YeYeさんにインタビュー│愛犬ムンゲを描く、出会いが作品を広げていく

韓国人画家YeYeさんにインタビュー│愛犬ムンゲを描く、出会いが作品を広げていく

韓国在住の美術作家YeYe(イェイェ)さんは、愛犬ムンゲを描く作品で、日本や韓国で注目を集めるアーティストです。やわらかな色彩とフォルムの奥に、言葉にしづらい感情の重さが立ち上がる表現が、多くの共感を呼んでいます。2025年には村上隆氏が主宰する「Kaikai Kiki Gallery」で大型個展を開催し、国際アートフェア『ART SG 2025』でも作品が初展示されるなど、その活動の幅を広げています。本記事では、福福堂編集部がYeYeさんにインタビューを行い、「出会い」を軸に制作の原点から現在、そしてこれからについてうかがいました。

愛犬ムンゲとYeYeさん。個展会場にて。

愛犬『ムンゲ』 名前の由来
『ムンゲ』の名前には、韓国語で『ふわふわ(もふもふ)』といった意味が込められています。マルチーズの白くてふわふわとした毛並みが「わた雲」のようであることから名付けられました。なお、ムンゲの物語を綴った韓国での原書のタイトルは『クルモン』です。これは『文字』と、犬の鳴き声、そして犬をさす『モン』を組み合わせた造語で、『文章を書くワンちゃん』といった意味を持っています。

アーティスト以前―韓国では「電子製品の専門店」、日本では「哲学の道(銀閣寺)」

――YeYeさんにとって、幼少期に記憶に残る場所はどこでしょう。


「幼少期に好きだった場所は、韓国にある『テクノマート』という電子製品の専門店が集まった大きなビルでした。電子機器を見るのも好きでしたし、ゲームにも興味があったんです。お小遣いがなくて何も買えなくても、よく見に行っていました」


――では、日本留学時代に好きだった場所はどちらでしょう。


「京都精華大学時代に好きだった場所は、銀閣寺の前にある哲学の道でした。頻繁に行っていたわけではないのですが、とても好きな場所でした。韓国から友人や家族が遊びに来ると、必ず一緒に歩いていた気がします」


――にぎやかな電子機器の空間と、静かな思索の小径。対照的な二つの場所は、アーティストの背景にある原点のようですね。

京都の「哲学の道」は、左京区の銀閣寺付近から若王子神社まで続く、琵琶湖疏水沿いの約1.5〜2kmの散歩道です。哲学者・西田幾多郎が思索に耽りながら歩いたことに由来し、春は桜、初夏は新緑が美しい名所として知られています。韓国人画家YeYeさんもこの道を好みました。

愛犬ムンゲとの出会い――第一印象は『毛玉』

――作品に登場する愛犬ムンゲとの出会いについてお聞かせください。

ムンゲは、母の友人の家で生まれた犬でした。2匹のうち、ムンゲは母犬のお乳をたくさん飲んでしまう子だったため、別の家(私の実家)に迎えられることになったといいます。
私は夏休みに帰国したときに初めてムンゲに会いました。子犬を想像していたのですが、とても大きく、大きな声で吠える、まるで『毛玉』のような犬でした。その第一印象は強烈で、出会った瞬間から自然と手が動き、クロッキーを始めました。

――その後、大学院の修士修了制作として制作した絵本が、ムンゲを題材とした最初の発表作品となってゆくのですね。

愛犬ムンゲとアーティストYeYeさん
愛犬ムンゲとアーティストYeYeさん

村上隆さんとの出会い、そしてカイカイキキギャラリーでの個展

――2025年、カイカイキキギャラリーで個展『テレパシー』を開催されましたね。村上隆さんとの出会いについてお聞かせいただけますか。

「2024年の冬に村上隆さんからいただいたビデオメッセージがきっかけでした。展示に誘ってくださり、見学や打ち合わせのため、私はすぐに東京へ向かいました。ギャラリーやカイカイキキのスタジオを案内していただき、まるで夢のような時間を過ごしました」

『深める』――これからの制作について

――個展『テレパシー』でYeYeさんは、ビデオの中のムンゲと自身を描く作品や、セラミックによる立体作品など、新たな表現にも取り組まれていました。その個展を受けて、今後はどのような作品を制作されるご予定でしょう。

「いまは、新しいことに次々と挑戦するというよりも、これまでの表現をさらに深めていきたいと思っています。セラミックも、もっと本格的に制作していきたいですね。絵の中にも、別の要素を自然に溶け込ませていきたいです。自分の作品に、さらに時間とクオリティを注いでいきたいと思っています」

カイカイキキギャラリーでの個展(写真:Kaikai Kiki Gallery提供)

ファンからの印象に残る言葉――『重すぎて見られなかった』

――絵本の読者や、個展の来場者からの印象的な言葉についてもお聞かせいただけますか。

「『YeYeさんの作品は、伝わる感情があまりにも重くて、しばらく見るのを避けていた』という言葉が、とても印象に残っています。良い意味で、ずっと忘れられない感想です」

YeYeさんのスタジオ
YeYeさんのアトリエで描かれた愛犬ムンゲの作品

作品をより身近に届ける『グッズ』――アフタヌーンティー・リビングとのコラボ

――ムンゲがぬいぐるみやバッグになりましたね。コラボしているアフタヌーンティー・リビングさんとの出会いについてもお聞かせください。

「以前から、私の作品を好きでいてくださっても、絵画作品そのものを気軽に所有することが難しい方々へ、グッズという形で届けたいと思っていました。私の友人が以前、アフタヌーンティー・リビングさんととても良いコラボレーションをしていました。そんな時、声をかけていただいたことがきっかけでお引き受けしたのです。」

――アーティストにとって、グッズの制作にはどんなチャレンジが含まれているのでしょうか。

「作品をより身近に届けることを大切に考えています。グッズという形で自身の作品が様々な方の生活の中に入り、誰かの手元に残っていく――その実感は、アーティストにとって大きな意味を持つんです」

――絵本、絵画、立体作品、グッズと、アーティストのメッセージを届ける方法は多様なのですね。

これから挑戦したい『木工』

――YeYeさんは、最近、木工にも関心を寄せているといいます。

「いつか工房に通って学んでみたいと思っています。学びを積み重ね、深めていきたいです。それがやがて表現へとつながります。深めた学びは、私の作品に新たな広がりをもたらしてくれると思います」

――YeYeさん、本日はありがとうございました!

YeYeさんのアトリエ風景

ムンゲを描くという行為は、単なるモチーフの反復ではありません。愛犬とともに過ごした時間をなぞりながら、すでに失われた存在の気配や感情に触れ直すことでもあります。かわいらしいフォルムと温かな色彩で描かれるYeYeさんの作品からは、愛犬ムンゲの姿に託し、ひと言で言い表せないさまざまな感情が描かれているように感じられます。YeYeさんの描くムンゲから感じられるその静かな余韻は、見る人の心に長くとどまります。

〈インタビュアー 福福堂編集部〉

Artist Bio

YeYe

2011 京都精華大学 アニメーション学科 学士(2011年)
2013 京都精華大学 大学院マンガ研究科 漫画専攻 修士(2013年)

◆著作
2019 『私、こんな風に見えてもちゃんと生きています』 ブックラム出版社
2022 『グルメ、文章を書くワンちゃん』 モベリー出版社
2023 『グルメ、文章を書くワンちゃん スペシャルエディション』 モベリー出版社
2024 『君から学んだこと、例えばサツマイモへの向き合い方』 モベリー出版社

◆展覧会
​2022 個展『Moonge』 House Seoul Gallery
​2024 個展『My Idol』 Hippie Hannam Gallery
2024 グループ展 『伴侶とされること』 スターバックス ブカンガンR
2024 グループ展 『時をつなぐ』 スーペリア・ギャラリー
2025 出版記念展 『はじめまして、ムンゲです。』 NEUTRALギャラリー、京都
2025 アートフェア 『Art SG 2025』 カイカイキキ・ギャラリー、シンガポール
2025 アートフェア 『Art OnO 2025』 カイカイキキ・ギャラリー、ソウル
2025 個展 『潦草小狗』 7 1/5 Gallery, 北京
グループ展 『大・犬展』 ヒルネコブックス、東京
2025 個展 『Telepathy』 カイカイキキギャラリー、東京
2026 アートフェア 『Frieze LA 2026』 カイカイキキギャラリー、ロサンゼルス
2026 アートフェア 『Art Basel HK』 カイカイキキ・ギャラリー、香港

これからの展覧会

coming soon

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