福福堂ギャラリー上原では、内田真弓プロデュース『アボリジナルアート展』を長年にわたって開催しております。本日は、幾つかの作品とアボリジナルアートの画家を紹介したいと思います。
画家セリーナ・ティースの作品『食物採集/ Bush tucker gathering』
拙宅では、漆のテレビ台の上にアボリジニアートを二枚飾っています。
アボリジニアートと漆、意外と合うんです。もともと日本もアニミズム(霊魂)の国、共通するものがあるのでしょうね。
さて今日の一枚は、セリーナ・ティースという作家さんの作品です。私は拝見するのは今回初めて。和的でシック。複雑に重なり合ったモチーフがとても洗練されています。
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作者 セリナ・ティース/ Selina Teece
出身 中央砂漠 ユトーピア コミュニティ/ Utopia
言語集団 アマチャラ/ Anmattyere
タイトル 食物採集/ Bush tucker gathering
サイズ 43cmx90cm
作者は1977年生まれ。幼い頃からすでに積極的に絵画制作をしていた親族が多く居たという環境から自分も絵を描くことにはとても自然なことだと認識しており、また常に興味を抱いていたという。
グループ展で出展を始めたのは2007年からで、斬新な画法とユニークな色使いが特に若い世代から支持され、最近ではオーストラリア国内のインテリア雑誌などにもしばしば登場する人気ぶりだ。
国内でのファン層は厚く海外にもコレクターが多々存在する。
物質文明とはもっともかけ離れた環境で、はるか5万年前の太古から野生で得られるものだけで生き延びてきたアボリジニの人々。
彼らはいかに自分たちが大地と共存して生きるかという教えを何世代も前から次の世代へと確実に伝承してきたのだ。
その教えこそが、彼らにとって「大地」を守り抜くためのかけがえのない教育となるのだろう。
作家はこんな方です(若い!)。
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画家ジニー・ミルズの作品『ボディペイント/Body Paint』
ジニー・ミルズさんの作品は昨年以前も出品されていましたが、彼女のこのテーマは私、今回、初めて見ます。画面中見受けられるUの字は、ヒトのお尻の跡→すなわち人間を表します。
この作品は、未額装ですので、お求めになられる方のお好みを伺って額装いたします。
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作者 ジニー・ミルズ/ Jeannie Mills
出身 中央砂漠ユト-ピアコミュニティ/ Utopia
言語集団 アマチャラ/ Anmatyarre
タイトル ボディペイント / Body Paint
サイズ 30cm x 30cm
作者はユトーピアの女性画家では1990年代後半から絵画制作に励んでいた比較的若い作家である。
「読む」「書く」といった文字を持たない無文字社会で暮らしたアボリジニの人々が身体に描く模様はそれぞれ文字に代わる意味をもつ「ビジュアルな言語」として代々伝承をされてきた。
細やかなドットを何層にも重ねる手法が人気であり近年ではコレクターも増えている。
作者が絵画を描くということは大地と自分との関わりの表現であり、これは
はるか太古から伝えられてきた祖先からのメッセージをいまも大切に守り続ける重要な儀式を行っているのと同じだと誇らしげにいう。
作家さんはこんな方です。↓
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画家シャキラ・パトリック/Shakira Patrickの作品「ヤム芋の種のドリーミング Bush Yam Potato・ Dreaming」
今日の一枚 初めて出品する作家さんです。
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「ヤム芋の種のドリーミング Bush Yam Potato・ Dreaming」
作者 シャキラ パトリック/ Shakira Patrick
出身 中央砂漠ユト-ピアコミュニティ/ Utopia
言語集団 アランタ / Aarrernte
タイトル ヤム芋の種のドリーミング
Bush Yam Potato・ Dreaming
サイズ 60cm x 120cm
ヤム芋の種のドリーミング、色が微妙に変化していく様が見ていてとても気持ちがよい一枚です。アボリジニアートは縦にしても横にしてもいいアートです。ぜひこの作品の隣に観葉植物を飾って楽しんでください。
作者はユトーピアの女性画家では1990年代後半から絵画制作に励んでいた比較的若い作家である。
細やかな点描は乾燥した砂漠地帯にようやく夏の雨が降ったあと、色とりどりの草花が咲き乱れそこにブッシュヤムポテトの種の部分を描いている。
(注:ブッシュヤムポテト→ 乾燥したオーストラリアの中央砂漠でアボリジニたちの大切な食料源となるイモ科の植物で栄養価が高い。
これは作者の描く作品で主題となることが多く、そのブッシュヤムポテトは自分の母親のカントリーに生息するものだという。
細やかなドットを何層にも重ねる手法が人気であり近年ではコレクターも増えてきた。
赤土に染まる砂漠の大地に様々な色を持つ植物がまるで絨毯の模様のようにあちらこちらに点在する光景は見事である。
作者が絵画を描くということは大地と自分との関わりの表現であり、これは
はるか太古から伝承されてきた祖先からのメッセージをいまも大切に守り続ける重要な儀式を行っているのと同じだと誇らしげにいう。
11月15日から銀座三越にて開催します。
作家さんはこんな方です ↓
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画家ドリス・ブッシュ/ Doris Bushの作品『ボディペイント/Body Paint』
11月15日から銀座三越で開催『アボリジニアート2017』、ぜひお越しください。
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作者 ドリス・ブッシュ/ Doris Bush
出身 中央砂漠パパニアーコミュニティ/ Papunya
言語集団 ピンタピ族/ Pintupi
タイトル ボディペイント/Body Paint
サイズ 30cm x 30 cm
オーストラリア中央砂漠にある小さなアボリジニ居住区「パパニア」の西側に位置する儀礼の場所、そしてそこで行われる儀式の際に描かれるボディペイントが主題。
この場所は作者にとってはかけがえのない聖地であり、アボリジニにとっての聖地というのは精神的・肉体的な結びつきが何よりも強く、人々は伝説に伝わる大地の偉大な力を常にたたえながら、歌を歌い、物語を語り、そして絵を描く。
絵画に描かれている同心円は砂漠で最も重要である水場を表し、またそこへ様々な人々が集まる大事な集会場の意味も含む。
作者は推定で60代女性。独創性の強い作品が周りからの注目を高めている。
画家ジョーシー・パトリック Josie Patrickの作品『マイ・カントリー My Country』
2022年の『内田真弓プロデュース2022アボリジナルアート展』で特に来場者に人気だった画家はジョーシ-・パトリックだ。会期3日目、朝の時点で彼女の作品は残り1点となっていた。そんな彼女の作品から『マイ・カントリー』を紹介したい。
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タイトル マイ・カントリー/ My Country
サイズ 94cmx126cm
出身 中央砂漠ユト-ピアコミュニティ/ Utopia
言語集団 アマチャラ族/ Anmatyarre
ジョーシ-・パトリックは1953年生まれ、ユトーピアの女性画家として1990年代後半から絵画制作に励んでいたという。アーティストとしてのキャリアは比較的長いベテラン作家の1人だ。
この『マイ・カントリー』では、細やかな美しい点描は乾燥した砂漠地帯にようやく雨が降ったあと色とりどりの草花が咲き乱れ、そこにブッシュプラムが生息する様子を描いている。
(註:ブッシュプラムとは乾燥したオーストラリアの中央砂漠でアボリジニたちの大切な食料源となる果物の実である。ビタミンCを非常に多く含む。)
細やかなドット手法は誰もを圧倒し、美術愛好家たちからの評価はとても高い。コレクターもいまや世界各地に数多く存在する。メルボルンのビクトリア国立美術館に作品が所蔵されるほどの画家だ。
彼女が絵画を描くということは、大地と自分が常に関わり合っていることを確認することの表現である。これは『はるか太古より自分たちの祖先によって伝承されてきた大地からのメッセージを現在においても大切に守り続けるための重要な儀式と同じなのだ』と彼女は誇らしげに語っている。
写真だけでは作品の迫力には遠く及ばない。内田真弓氏よる魅力的な解説とともに、めったに出会う事のできない作品をぜひ会場で体感してほしい。
アボリジナルアート・プロデューサー 内田真弓さん
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内田真弓さんからのメッセージ
1971年、オーストラリアの中央砂漠で生まれたアボリジナルアートがいまや世界中のメジャーな美術館で所蔵され、個人コレクターたちによって数多く収集されているのをご存知でしょうか。
5万年以上も自然と共生し、無文字社会で暮らした先住民アボリジニの人々は砂漠という厳しい環境で生き抜くための知恵を文字の代わりに「絵」で伝承をしてきました。視覚的にはよくわからないアートかもしれませんが、作品には全て“ストーリー”があります。それは彼らが5万年という悠久の時を超えて脈々と紡いできた「命の物語」なのだと信じます。
今、世界の多くの文明先進国が提唱している「SDGs/持続可能な開発」。遥か太古からエコロジカルな世界観で生きてきたアボリジニの人々の暮らしこそがまさにその良いお手本だと思うのは私だけではないはずです。
今年もそんな彼らの美しく、力強い作品をご紹介できる喜びは言葉になりません。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。
Land of Dreams 代表 内田真弓
内田真弓さんとアボリジナルアートの出会いの物語
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