猫の絵画|猫を描いた有名画家と名作を紹介

猫は古代から多くの芸術家に愛されてきた動物です。古代エジプトでは神聖な存在として描かれ、近代以降の西洋絵画や日本画、浮世絵においても、猫は人気のモチーフとして数多くの作品に登場してきました。

このページでは、猫を描いた有名な画家や名作、さらに猫が美術の中でどのような意味を持ってきたのかをまとめて紹介します。猫が登場する名画を知りたい方、猫をテーマにした芸術作品に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。

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  1. 猫を描いた有名画家
  2. 猫を描いた有名な絵画
  3. 猫はなぜ絵画のモチーフとして人気なのか
  4. 猫の絵画史・猫の芸術史|猫と文明のあゆみ
  5. 世界で最も古い猫の絵
    1. 最も古い「猫の絵」は何か?|ネブアメンの墓の壁画
  6. 古代エジプト|神聖なる伴侶と社会秩序を象徴する猫
  7. 東アジア|調和・幸運・洗練の象徴としての猫
    1. 中国|漢〜唐時代の猫
    2. 日本|江戸時代の猫をちょっと詳しく
    3. 招き猫|縁起の良い守り神としての猫
    4. 浮世絵と猫|擬人化された猫は、都市が成熟したことの現れ
      1. 猫のアートと言えば歌川国芳が有名
    5. 神道と猫|神聖さと両義性
    6. 東アジアにおける猫の象徴性
  8. ヨーロッパ(中世〜ルネサンス)|悪魔視されていた猫を再評価する時代へ
    1. 中世ヨーロッパ
    2. ルネサンス期
  9. 19世紀ヨーロッパ|家庭の象徴としての猫
  10. 20世紀|個人主義と心理の象徴としての猫
  11. 21世紀|デジタル文化の中の猫
  12. 有名な猫の絵画
    1. 歌川国芳
    2. 藤田嗣治
    3. ピエール=オーギュスト・ルノワール
    4. 鳥獣戯画
  13. 猫が象徴する意味(シンボル)
    1. 古代エジプト|神聖な存在
    2. 中世〜近世ヨーロッパ|神秘・不吉・魔女のイメージ
    3. 日本|身近な生活の動物、そして縁起物へ
  14. 世界の地理、歴史を比較する|猫美術・猫アートがもつ意味
  15. まとめ|猫と人の関係をたどることは、私たちが自然との共生を見つめ直すこと
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猫を描いた有名画家

猫は多くの画家に愛されてきたモチーフです。印象派の画家や近代絵画の作家、日本の浮世絵師の中にも、猫を描いた作品を残した人が少なくありません。猫は自由で気まぐれ、しかもどこか神秘的な存在であり、その独特の魅力が画家たちにインスピレーションを与えてきました。

  • エドゥアール・マネ
  • ピエール=オーギュスト・ルノワール
  • パブロ・ピカソ
  • 歌川国芳
  • 藤田嗣治

猫を描いた有名な絵画

猫が描かれた絵画には、可愛らしい作品だけでなく、象徴的な意味を持つ作品も多くあります。西洋絵画では家庭の情景の中に登場することが多く、日本美術では擬人化や吉祥のモチーフとして扱われることもありました。

猫は古くから絵画の題材として描かれてきました。本記事では、猫がどのように芸術の中で表現されてきたのかを、人間との関わりや時代背景とともに見ていきます。

猫はなぜ絵画のモチーフとして人気なのか

猫は古くから人間と共に暮らしてきた動物であり、その神秘的で自由な性格から、多くの芸術家に好まれてきました。古代エジプトでは神聖視され、中世ヨーロッパでは象徴的・迷信的な意味を与えられ、日本では身近な生活の動物であると同時に縁起物としても親しまれてきました。

近代以降になると、猫は家庭生活の象徴として絵画に登場することが増え、印象派や近代美術の作品にも多く描かれるようになります。現代でも猫をテーマにした作品は人気が高く、猫は時代を超えて芸術家を惹きつけるモチーフであり続けています。

紀元前15世紀のエジプトの墓の壁画には、椅子の下で魚を食べる猫が描かれています。 By Unknown author – Matthias Seidel, Abdel Ghaffar Shedid: Das Grab des Nacht. Kunst und Geschichte eines Beamtengrabes der 18. Dynastie in Theben-West, von Zabern, Mainz 1991 ISBN 3805313322, Public Domain, Link

猫の絵画史・猫の芸術史|猫と文明のあゆみ

猫の絵や、猫を題材にしたアートといえば、歌川国芳や藤田嗣治などがよく知られています。近年は猫をテーマにした絵画やアート作品がますます人気を集めており、これは日本だけでなく世界的にも見られる傾向です。私自身も「猫のアート展を企画してほしい」というご依頼をいただく機会が増えてきました。

歌川国芳作「猫のけいこ」天保12(1841)年。三味線を弾く猫の作品。

そんな中で、ふと次のような疑問が浮かびました。
――「猫の絵は、いつ頃から描かれてきたのだろうか。なぜ今、これほどまでに人気があるのだろうか。」

結論から言えば、「最初に猫を描いた人」が誰なのかは分かっていません。しかし、古代エジプトではすでに紀元前の時代に猫を描いた絵が見つかっています。つまり人間は、文明のかなり早い段階から、猫という存在に特別な関心を寄せていたのです。

そして時代を経るごとに、猫をモチーフとした芸術は世界各地で発展し、人々の心を惹きつけてきました。

このページでは、「猫の絵画・猫の芸術」を通して、猫がどのように文化的象徴として変化してきたのかをたどります。単なる美術の歴史としてではなく、人間が動物や自然、家庭生活、信仰、そして感情とどのように関わってきたかを映す“鏡”として、猫という存在を見つめ直していきます。

古代エジプトの神聖な守護者から、現代のデジタル社会で愛されるインターネット・アイコンに至るまで――猫とともに歩んできた人類の芸術と文明の物語を、時代と地域を越えて振り返ってみましょう。

世界で最も古い猫の絵

最も古い「猫の絵」は何か?|ネブアメンの墓の壁画

「これが確実に世界最古の猫の絵である」と断定できる作品はありません。ただし、最もよく言及される例のひとつに、エジプトのテーベ(現在のルクソール近辺)にあるネブアメンの墓の壁画があります。この墓はエジプト第18王朝時代のものとされ、狩猟や鳥獲りの場面の中に猫が描かれています。

テーベ(現代のルクソール近辺)にある ネブアメンの墓(Nebamun Tomb) の壁画 Ashley Van Haeften – https://www.flickr.com/photos/wikimediacommons/24619119019/, CC 表示 2.0, リンクによる

また、古代エジプトや古代ローマの美術には、猫をモチーフにした壁画やモザイクも見られます。これらは、人間がかなり早い段階から猫を身近な存在として認識し、絵画や装飾の中に取り入れていたことを示しています。

古代ローマのモザイク画。ポンペイの牧神の家で出土した「ヤマウズラを仕留める猫」の図。上段:口にヤマウズラをくわえた猫。下段:アヒル(左は雄のコガモ、右はツクシガモ)、鳥、魚介類。ローマ時代のモザイク。 By Unknown artist – Marie-Lan Nguyen (2011), Public Domain, Link

古代エジプト|神聖なる伴侶と社会秩序を象徴する猫

穀物倉庫を害虫から守るという猫の実用的な役割は、やがて道徳的・宗教的な価値を帯び、神聖視されるようになります。猫は豊穣、母性、家庭の守護を司る女神バステトと結びつけられました。

当時の人々にとって、食糧を守ることは文明そのものを守ることと同じでした。猫は、自然と人間社会の仲介者として尊ばれ、野生的でありながら家庭に馴染む存在でもありました。その二面性は当時の美術にも反映され、猫は家畜であると同時に神聖な象徴として描かれていたのです。

古代エジプトのネコの像(ルーヴル美術館所蔵)

東アジア|調和・幸運・洗練の象徴としての猫

東アジアでは、猫は比較的肯定的な存在として受けとめられてきました。静けさ、優雅さ、幸運、家庭の安定といった意味を担い、生活や信仰、芸術の中に自然に溶け込んでいきます。

中国|漢〜唐時代の猫

中国では、猫は静寂や優雅さ、繊細さの象徴とされてきました。詩や絵画の中では、学者の静かな伴侶として登場し、装飾芸術では長寿や富をもたらす吉祥のシンボルとして描かれることもあります。猫はさまざまな文脈で好意的にとらえられてきたのです。

日本|江戸時代の猫をちょっと詳しく

日本では、猫は生活に密着した身近な動物として親しまれてきました。招き猫が商売繁盛や福を呼ぶ縁起物として広まり、浮世絵では遊び好きで、ときに擬人化された存在として描かれます。都市文化が成熟した江戸時代には、猫は娯楽や風刺、ユーモアの象徴にもなりました。

神道の世界では、猫は守護的な存在にも、妖怪的な存在にもなりうる両義的な動物でした。東アジアにおける猫は、「家庭的でありながら自由」「幸運をもたらしながら神秘的」といった、調和と均衡の象徴として描かれてきたといえるでしょう。

絹本著色班猫図 竹内栖鳳筆 山種美術館所蔵

招き猫|縁起の良い守り神としての猫

招き猫は、江戸時代に日本で生まれたとされる縁起物です。起源にはいくつかの説がありますが、豪徳寺の伝説や今戸焼の丸〆猫をルーツとする説がよく知られています。

上げている手によって意味が異なるとされ、右手は金運や商売繁盛、左手は人や客を招くこと、両手は厄除けや家内安全を表すといわれます。また、色にも意味があり、三毛猫は特に縁起が良いとされ、黒は魔除け、赤は病除け、金は金運上昇、ピンクは恋愛成就などを象徴します。

招き猫は、江戸時代に日本で生まれたとされています。

猫が選ばれた背景には、もともとネズミを駆除する益獣として重宝されていたことがあるでしょう。こうした実用性が、「猫は福を運ぶ」という観念へとつながっていったと考えられます。

『そめいろづくし』 歌川国芳  染め物を題材にした団扇絵の戯画。猫やキツネやクマが描かれています。 歌川国芳http://visipix.com/search/search.php?userid=1616934267&q=%272aAuthors/K/Kuniyoshi%201797-1861%2C%20Utagawa%2C%20Japan%27&s=14&l=en&u=2&ub=1&k=1, パブリック・ドメイン, リンクによる

こちらの記事もご覧ください→ まめちしきvol.13「昔の人も猫の絵を描いていたんですか?」

浮世絵と猫|擬人化された猫は、都市が成熟したことの現れ

猫のアートと言えば歌川国芳が有名

江戸時代、歌川国芳をはじめとする浮世絵師たちは、猫を題材にした多くの作品を残しました。特に国芳は大の猫好きとして知られ、猫を擬人化したユーモラスな作品や、猫で文字や人物を表現する遊び心ある作品で人気を集めました。

稀代の猫好きとして知られる浮世絵師歌川国芳による1図 『其のまま地口 猫飼好五十三疋』

天保の改革によって贅沢な題材や役者絵、美人画などが制限されると、浮世絵師たちは直接的な表現を避けながら工夫を凝らしました。その結果、猫に人間の役割を担わせる表現が生まれ、風刺や機知に富んだ作品が多く制作されるようになります。

猫がこれほど多く描かれたのは、庶民にとって猫が身近で人気のある存在だったからです。擬人化された猫の表現には、都市文化の成熟や、当時の人々の遊び心がよく表れています。

神道と猫|神聖さと両義性

日本各地には猫を祀る神社があり、猫はネズミを駆除する益獣として、農耕や養蚕の守護と結びつくこともありました。その一方で、猫は神秘的で超自然的な存在とも考えられ、高齢の猫が化ける「猫又」などの妖怪伝説も生まれます。

このように猫は、ありがたい守護的存在であると同時に、不可思議で恐ろしい存在にもなりうる、二面的な象徴として日本文化に根付いてきました。

Sawaki Suushi (佐脇嵩之, Japanase, *1707, †1772) – scanned from ISBN 4-3360-4187-3., パブリック・ドメイン, リンクによる

東アジアにおける猫の象徴性

東アジア全体を見ても、猫は「家庭的で愛らしい存在」でありながら、「神秘的で自由な存在」として描かれてきました。幸運と神秘、親しみと距離感、その両方をあわせ持つ存在として受けとめられてきた点が特徴です。こうした二面性こそが、猫を特別なモチーフにしているのでしょう。

「猫に提燈」 小林清親 (1847-1915)

ヨーロッパ(中世〜ルネサンス)|悪魔視されていた猫を再評価する時代へ

ヨーロッパでは、猫の評価は時代によって大きく変化しました。中世には夜行性や独立心が不吉なものとされ、迷信や恐怖と結びつけられることがありましたが、ルネサンス期になると自然観察の対象として見直されていきます。

中世ヨーロッパ

中世ヨーロッパでは、猫の夜行性や独立心が「魔女の使い」とされ、恐れや迷信の対象になることがありました。写本や彫刻の中では、不吉や混沌の象徴として描かれる場合もあります。ペスト流行期には猫への偏見が強まり、結果としてネズミの繁殖を助長したとも語られています。

ルネサンス期

ルネサンス期になると、観察や自然への関心が高まり、猫は再び「自然の一部」として見直されるようになります。レオナルド・ダ・ヴィンチの猫の素描には、動きや構造を注意深く観察しようとする姿勢が見られます。

宗教画では、猫が女性性や官能性の象徴として描かれることもありました。猫は、迷信から理性へ、支配から観察へというヨーロッパ社会の世界観の変化を映す存在でもあったのです。

猫と幼子キリスト レオナルドダヴィンチ 大英博物館 By Leonardo da VinciThe British Museum Database , Public Domain, Link

19世紀ヨーロッパ|家庭の象徴としての猫

産業革命以後、中産階級の家庭が台頭すると、家庭は感情と安らぎの場として意識されるようになりました。その中で猫は、愛玩動物として親しまれ、家庭的な幸福や穏やかな時間の象徴として描かれます。

画家アンリエット・ロンナー=クニップらは、華やかな室内の中に猫を描き、女性の優雅さや母性愛、穏やかな日常を表現しました。この時代、動物はもはや労働力や宗教的象徴だけでなく、人間の感情を映す存在として扱われるようになったのです。

画家ルイス・ウェイン(Louis Wain, 1860年8月5日-1939年7月4日)は擬人化したネコを多く描いたことで知られる。

20世紀|個人主義と心理の象徴としての猫

モダニズムの時代になると、猫は芸術家にとって形、感情、アイデンティティを探求する象徴的な存在となります。パウル・クレー、藤田嗣治、ピカソらは、猫のしなやかな動きや孤高な性質を通して、人間の内面世界を表現しました。

また、20世紀以降の文化では、猫は女性の自立や官能性の比喩として描かれることもあります。猫は単なる動物ではなく、人間の心理や欲望を映す鏡のような存在になっていったのです。

パウル・クレーがバウハウス在任中の1928年に描いた作品「猫と鳥」は、額に小鳥を乗せた猫の顔を描いた代表作で、現在はニューヨーク近代美術館に所蔵されている。 Von Paul Klee – Eigenes Werk, Gemeinfrei, Link

21世紀|デジタル文化の中の猫

現代において、猫はインターネット上で最も親しまれる存在のひとつとなりました。いわゆる“猫ミーム”は、可愛らしさと皮肉、不条理さをあわせ持つ現代的ユーモアの象徴ともいえます。

NFTアートやストリートアートなど、現代のビジュアルカルチャーの中でも猫は頻繁に登場します。オンライン上で擬人化された猫たちは、人間の感情を託され、言葉を超えて世界中の人々をつなぐ存在となっています。現代の猫イメージの広がりは、ハイテク社会の中で人間が自然との心のつながりをどこかで求めていることの表れかもしれません。

「キーボードキャット」は、猫を題材にした初期のインターネットミームである。1984年にチャーリー・シュミットが撮影した、飼い猫ファッツォ(1978-1987)がキーボードを弾く映像が原型で、2009年に再編集動画で使われたことで世界的に話題となった。 By Screengrab from approx 0:25 of Schmidt’s video [1], Fair use, Link

有名な猫の絵画

猫は古くから多くの画家たちによって描かれてきました。時代や地域によって、神聖な存在、家庭の動物、ユーモラスな存在など、さまざまな姿で表現されています。ここでは、美術史の中でよく知られている猫の作品や画家をいくつか紹介します。

歌川国芳

江戸時代の浮世絵師、歌川国芳は、猫を題材にした作品で特に知られています。国芳は大の猫好きとしても有名で、自宅でも多くの猫を飼っていたと伝えられます。作品には、猫を擬人化したユーモラスな浮世絵や、猫で人物や文字を表した遊び心ある図柄が多く、猫の自由で愛らしい姿が生き生きと描かれています。

歌川国芳『猫の当字 なまず』 当て字絵
歌川国芳『猫の当字 なまず』 当て字絵

藤田嗣治

藤田嗣治は、猫を描いた作品で世界的に知られる日本人画家の一人です。乳白色の下地を生かした独特の技法で描かれた猫は、柔らかな毛並みや穏やかな表情が印象的です。藤田の猫には、単なる動物表現を超えた、静かな親しみと品格があります。

ピエール=オーギュスト・ルノワール

印象派の画家ルノワールも、猫を描いた作品を残しています。代表作のひとつ「猫を抱く少女」では、少女と猫が穏やかな日常の中で描かれ、柔らかな色彩と温かな雰囲気が印象的です。19世紀ヨーロッパにおいて、猫が家庭の親しい動物として見られるようになった流れも感じられます。

『猫を抱く少女』ピエール=オーギュスト・ルノワール
『猫を抱く少女』ピエール=オーギュスト・ルノワール Painting; oil on canvas; overall: 56 x 46.4 cm (22 1/16 x 18 1/4 in.) framed: 85.1 x 75.9 x 7.6 cm (33 1/2 x 29 7/8 x 3 in.);

鳥獣戯画

日本の中世絵巻である「鳥獣戯画」は、日本美術における動物表現の流れを考えるうえで重要な作品です。後の漫画やキャラクター文化にも通じる表現として語られることがあり、日本の動物表現の系譜を考えるうえで触れておきたい作品のひとつです。

このように、猫は時代や文化によってさまざまな姿で描かれてきました。神秘的な存在として、また身近な生活の動物として、猫は多くの画家にとって魅力的なモチーフであり続けています。

鳥獣戯画・相撲
鳥獣戯画

猫が象徴する意味(シンボル)

猫は、時代や地域によってさまざまな意味をまとってきました。絵画や版画の中に猫が登場するとき、そこには単なる「かわいい動物」としての描写だけでなく、当時の社会や信仰、暮らしの感覚が映り込むことがあります。

古代エジプト|神聖な存在

古代エジプトでは、猫は害獣を防ぐ実用的な存在であると同時に、家や穀物を守る神聖な存在として敬われました。こうした背景から、猫は守護や神聖さの象徴となっていきます。

中世〜近世ヨーロッパ|神秘・不吉・魔女のイメージ

ヨーロッパでは、夜に行動する性質や、人に媚びない気まぐれさが、神秘や不気味さと結びつけられました。黒猫が描かれる場合、可愛らしさだけでなく、どこか謎めいた空気や不穏さを演出する役割を担うこともあります。

ピーテル・ブリューゲルの描いた「死の勝利」からは、中世ヨーロッパを壊滅させたペストの大流行に続く社会的大混乱と恐怖が感じ取れます。 By Pieter Brueghel the ElderMuseo del Prado, Public Domain, Link

日本|身近な生活の動物、そして縁起物へ

日本では猫は比較的早くから生活の中に入り込み、身近な動物として描かれてきました。浮世絵では自由で愛らしい存在として、ときに擬人化され、ユーモアや風刺の題材にもなります。また、招き猫に代表されるように、福や商売繁盛と結びつく縁起物としてのイメージも広まりました。

清水清風作『うなゐの友』の猫。日本、1891-1923年。ブルックリン美術館。 うなゐ=子供。うなゐの友=おもちゃという意味です。 By Brooklyn Museum – Brooklyn Museum, No restrictions, Link

このように猫は、神聖さ、神秘、不穏さ、親しみ、縁起の良さなど、時代と文化によって多層的な意味を持つモチーフです。作品の中の猫を見るとき、描かれた背景や時代を想像すると、鑑賞がより深く楽しくなります。

※作品によって猫の意味は異なります。必ずしも「猫=○○」と固定できるものではなく、文脈によって表情が変わるのも、猫モチーフの面白さです。

世界の地理、歴史を比較する|猫美術・猫アートがもつ意味

猫は、時代や地域によってまったく異なる意味を与えられてきました。神聖な守護者として崇められることもあれば、不吉な存在として恐れられることもあり、また家庭の幸福や個人の感情を映す存在として親しまれることもありました。

現代では、オンライン上で擬人化された猫たちが、人間の感情や声を託され、世界中の人々をつなぐ共感の象徴のような役割を果たしています。猫のイメージの広がりは、時代ごとの価値観の変化をよく映しているといえるでしょう。

時代・地域猫の象徴的意味社会文化的役割
古代エジプト神聖・守護自然と秩序の仲介者
東アジア調和・吉祥幸運と均衡の象徴
中世ヨーロッパ悪魔的・不吉恐怖と支配の投影
ルネサンス観察対象人間の好奇心の反映
19世紀家庭的・情緒的私的愛情と家庭の象徴
20世紀心理的・官能的個人の内面と自立の象徴
21世紀遊び心・拡散性世界的な共感の象徴
オンライン上で擬人化された猫たちは、人間の感情や声を宿し、言葉を超えて世界中の人々をつなぐ「共感の象徴」として機能しています。現代の猫イメージの広がりは、ハイテク社会の中で人間が再び自然との心のつながりを取り戻そうとする動きを示しているのかもしれません。

まとめ|猫と人の関係をたどることは、私たちが自然との共生を見つめ直すこと

猫は、古代から現代に至るまで、常に人間社会の価値観や感情の変化を映してきました。神聖な守護者から家庭の癒やし手へ、そして今では世界共通のカルチャーアイコンへ――猫と人間の関係の歴史をたどることは、私たち人間が自然とどのように共に生きてきたのかを見つめ直すことでもあります。

そして、その問いに対して猫は、明日もきっと静かに、しかし確かに、自分らしい姿で答えてくれるのでしょう。

加納芳美「純白の志」(加納芳美インタビューはこちら

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