6月の読書

6月は意外と読書が捗らず、一冊のみ。

「ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論」

今年の春、武蔵野公会堂にて萩尾望都さんと対談をなさっていたヤマザキマリさん。
このトークイベントの存在を知ったときには、もう応募が締め切られていたので、応募すらできませんでしたが、倍率3・5倍だったそうです・・。

テルマエロマエで有名なヤマザキマリさんは、14歳でドイツとフランスを一人旅し、そこで知り合ったイタリア人のおじいさんの薦めで17歳からフィレンツェで油画と美術史を学んだという大変なツワモノです。
この本は、そのヤマザキさんの視点から見たルネサンス時代の(ちょっと変人な)画家たちと、ダンテやシェイクスピア、フェデリコ2世までについても熱く楽しく語った本です。

彼女の見方での「画家たちの変人ぶり」もユニークなのですが、彼女自身がちょっと遠くから日本を眺めて思ったことが書かれていて、それが秀逸でした。

ヨーロッパで暮らしていると歴史の中で多層にも積み重なった文化の厚みを感じる。その文化が新しい発想の土壌となり、新しい価値観を産んでいく。そして新旧のものたちが、当たり前のように積み重なり、また次へと受け継がれる。そのようなヨーロッパに暮らす友人たちに、日本がこれからの教育制度のなかで、人文学系の学問を縮小する方針だという話をすると、本気で心配されるそうです。曰く「日本はそんなんで大丈夫なのか?」と。

人間は知性の生き物であり、教養や知性が欠如したままの状態で放置されると、人は堕落し、劣化してしまう。人文学系の学問を軽視して縮小する動きがあるのは、とても危険なものである・・と。

そうですよね~。
日本では図画工作や音楽などを減らして、英語やプログラミングを増やすほうに進んでいるようですが、これは確かにマズイと思いますよね。
英語やプログラミングが出来る人は確かに今の世、重宝しますが、もしかしたら将来語学の壁が無くなるかもしれないし、大変なパラダイム変換が起きるかもしれない。
勿論、理系の基本教科は重要だと思うのですが、人文系は人の根幹に関わる教科、これを疎かにしたら、将来の日本は優秀な働き手だけの国になってしまうと思うのですよ。優秀な宦官のイメージ。その人達を使う側の人間は生まれて来ず、従うだけの真面目で優秀な人材の国に・・・。
これは長期的に見て、自分たちの首を絞める結果になるのではないかと私も危惧します。

ヤマザキさんは、文化の多様性についても、熱く熱く語っております。
例えばフェデリコ2世について。ルネサンスの少し前、神聖ローマ帝国のフェデリコ2世は大変なインテリで9か国語が話せ、生物学や数学、詩、音楽、芸術を愛し、造詣が深かった。彼自身はキリスト教徒だったが、イスラムなど他宗教や文化をも尊重する多様性の人でしたが、ヤマザキさんは、このフェデリコ2世がダンテやジョットの前駆となり、そしてルネサンスに繋がった重要な人物だと述べます。

そして文化の厚み多様性を、大切にしないとこれからの日本は危ういよ、と投げかけてます。

気軽に読んだ本でしたが、非常に考えさせられた本でした。

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