猫の絵で有名な画家には、日本では歌川国芳、菱田春草、竹内栖鳳、藤田嗣治、海外ではレオナルド・ダ・ヴィンチ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、パウル・クレーなどがいます。猫は古代エジプトの壁画から江戸時代の浮世絵、近代日本画、西洋近代絵画まで、時代や地域を越えて繰り返し描かれてきた人気のモチーフです。
猫の絵の魅力は、単に「かわいい動物」が描かれていることだけではありません。人間の暮らしに寄り添う身近な存在として描かれる一方、しなやかな身体、鋭い視線、気まぐれな性格は、画家にとって格好の観察対象にもなりました。さらに、ユーモアや風刺、親密さ、神秘性、生命感など、猫にはさまざまな意味が託されてきました。
この記事では、猫を描いた有名画家と代表的な名画、猫が絵画のモチーフとして愛される理由、古代から現代までの猫の絵画史をわかりやすく紹介します。

猫の絵で有名な画家は?日本・海外の代表画家
美術史には猫を描いた画家が数多くいます。その中でも、日本の猫の絵を考えるうえで欠かせないのが歌川国芳、菱田春草、竹内栖鳳、藤田嗣治です。西洋では、レオナルド・ダ・ヴィンチが猫科動物の動きを素描し、ルノワールは人と猫との親密な関係を描き、パウル・クレーは猫の意識そのものを思わせる独創的な作品を残しました。
| 画家 | 時代・地域 | 猫の絵の特徴 |
|---|---|---|
| 歌川国芳 | 江戸時代・日本 | 猫を擬人化し、文字や人物に見立てたユーモラスな浮世絵を多数制作 |
| 菱田春草 | 明治時代・日本 | 《黒き猫》で、黒猫の柔らかな毛並みと静かな存在感を表現 |
| 竹内栖鳳 | 明治~昭和・日本 | 《班猫》で、実際の猫を丹念に観察し、毛並みや姿勢、視線を描写 |
| 藤田嗣治 | 20世紀・日本/フランス | 猫を繰り返し描き、自画像や人物画にも猫を登場させた |
| レオナルド・ダ・ヴィンチ | ルネサンス・イタリア | 猫やライオンの身体、姿勢、動きを多数の素描で研究 |
| ピエール=オーギュスト・ルノワール | 19世紀・フランス | 人に抱かれたり寄り添ったりする、身近な存在として猫を描いた |
| パウル・クレー | 20世紀・スイス/ドイツ | 《猫と鳥》で、猫の姿と内面の欲求を一つの画面に表現 |
歌川国芳|猫を主役にした江戸の人気浮世絵師
猫の絵で有名な日本人画家として、まず名前が挙がるのが歌川国芳です。国芳は大の猫好きとして知られ、身近な猫の仕草を観察するだけでなく、猫を人間のように振る舞わせたり、多数の猫を組み合わせて文字や人物の形を作ったりしました。
《其のまゝ地口 猫飼好五十三疋》では、東海道五十三次の宿場名を猫の姿と語呂合わせで表現しています。猫を写実的な動物として描くだけではなく、笑いやしゃれの題材に変えてしまうところに国芳の魅力があります。国芳の猫作品については、歌川国芳と猫で詳しく紹介しています。
菱田春草と竹内栖鳳|日本画の名作になった猫
近代日本画を代表する猫の絵として知られるのが、菱田春草の《黒き猫》と竹内栖鳳の《班猫》です。春草の《黒き猫》は1910年の作品で、黒猫のふっくらとした体と柔らかな毛並みを、柏の葉や余白と組み合わせて印象深く表現しています。
竹内栖鳳の《班猫》は1924年の作品です。栖鳳は旅先で出会った猫を気に入り、京都に連れ帰って身近で観察しました。振り返る猫の姿勢、緑色の瞳、柔らかな毛並みまで細やかに捉え、一匹の猫そのものを堂々と絵画の主役にしています。日本画に描かれた猫については、猫の日本画とは|菱田春草『黒き猫』・竹内栖鳳『班猫』から見る猫の魅力でさらに詳しく解説しています。
藤田嗣治|生涯にわたって猫を描いた画家
藤田嗣治も、猫と深い関係を持つ画家です。藤田は猫を単独で描くだけでなく、自画像や人物画にも登場させました。人間のそばにいながら自由で、時に気まぐれな猫の性格は、藤田自身のイメージとも重なるように作品の中に現れています。
Galleryuehara.comでは、府中市美術館で開催された展覧会をもとに、藤田嗣治から現代まで続く猫の絵の系譜を「フジタからはじまる猫の絵画史」で紹介しています。
レオナルド、ルノワール、クレー|西洋美術に描かれた猫
西洋美術でも猫はさまざまな形で描かれてきました。レオナルド・ダ・ヴィンチは1517~18年頃の素描《猫、ライオン、竜》で、丸くなる猫、じゃれ合う猫、身をひねる猫など、猫科動物の身体と動きを繰り返し研究しています。
19世紀になると、猫は家庭の中の身近な動物としても目立つようになります。ルノワールの《猫を抱く女性》では、女性が猫を胸元に抱き寄せる姿が描かれ、人間と猫との親密な距離が画面の中心になっています。
20世紀のパウル・クレー《猫と鳥》では、猫の額の中央に小さな鳥が描かれています。鳥は猫が見つめる対象であるだけでなく、まるで猫の頭の中に浮かんでいるかのようです。写実的な猫の姿ではなく、猫の欲求や意識まで絵にしたところに、この作品のおもしろさがあります。
猫が描かれた有名な絵画・名画
猫を描いた有名な絵画は、一つの時代や国に集中しているわけではありません。紀元前の古代エジプトから江戸時代の浮世絵、近代日本画、フランス近代絵画、20世紀美術まで、猫は繰り返し名画の中に登場しています。
| 作品 | 作者 | 年代 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ネバムンの墓の壁画 | 作者不詳 | 紀元前1350年頃 | 沼地の狩猟場面で鳥を捕らえる猫を描く |
| 猫、ライオン、竜 | レオナルド・ダ・ヴィンチ | 1517~18年頃 | さまざまな姿勢を取る猫科動物を観察した素描 |
| 其のまゝ地口 猫飼好五十三疋 | 歌川国芳 | 江戸時代末期 | 猫の仕草と語呂合わせで東海道の宿場名を表現 |
| 猫を抱く女性 | ルノワール | 1875年頃 | 女性と猫との親密な触れ合いを描く |
| 黒き猫 | 菱田春草 | 1910年 | 黒猫の柔らかな毛並みと静かな存在感を描く |
| 班猫 | 竹内栖鳳 | 1924年 | 実際の猫を観察し、毛並みや視線、身体の量感を表現 |
| 猫と鳥 | パウル・クレー | 1928年 | 猫の額に鳥を描き、猫の意識を視覚化する |
これらの作品を並べてみると、猫がいつも同じ役割で描かれてきたわけではないことがよくわかります。狩りをする動物、画家が観察する身体、美人に寄り添う愛玩動物、浮世絵のユーモラスな主人公、そして一匹の生命そのものへと、猫の描かれ方は大きく変化してきました。さらに多くの作品を見たい方は、世界の猫の名画20選で作品ごとに紹介しています。
猫はなぜ絵画のモチーフとして人気なのか
猫がこれほど多くの画家を惹きつけてきた理由の一つが、身体と動きの豊かさです。眠って丸くなった姿、背中を伸ばす姿、獲物を狙って身を低くする姿、突然飛び上がる姿など、猫は短い時間の中でも形を大きく変えます。レオナルド・ダ・ヴィンチが猫の姿勢を繰り返し素描したことからも、画家にとって魅力的な観察対象だったことがわかります。
もう一つの理由は、人間に近いのに、人間に完全には従わないという独特の距離感です。犬とは違った自立性を持ちながら、人の膝の上で眠り、室内で暮らし、生活の最も身近なところに入り込みます。そのため、人物画や家庭の情景に自然に登場させることができる一方、猫だけを描けば独立した存在としても成立します。
さらに猫は、写実、装飾、擬人化、風刺、心理表現まで、幅広い表現に対応できます。竹内栖鳳は一匹の猫を丹念に観察し、歌川国芳は猫を人間のように振る舞わせ、パウル・クレーは猫の頭の中にある欲求まで絵画にしました。猫という一つのモチーフから、画家ごとの考え方や個性がはっきり見えてくるのです。
猫の絵画史|古代エジプトから現代まで
猫の絵の歴史をたどると、人間と猫との関係の変化も見えてきます。古代の壁画では人間の活動の一部として描かれ、ルネサンスでは動物の身体を研究する対象となり、江戸時代の日本では庶民文化の人気者になりました。近代には猫そのものを主役にした名画が生まれ、20世紀には画家の心理や造形を表す存在へと広がっていきます。
古代エジプト|人間のそばに描かれた猫
猫が描かれた非常に古い作品として知られるのが、紀元前1350年頃に制作されたネバムンの墓の壁画です。古代エジプトのテーベにあった墓室の壁画で、沼地で鳥を狩るネバムンと家族の場面に猫が登場します。猫は鳥に飛びかかり、前脚と後脚で獲物を捕らえています。

世界で最も古い猫の絵は何か
「世界で最も古い猫の絵」を一つの作品に断定することはできません。古代には猫科動物を表したさまざまな造形があり、年代にも幅があるためです。そのため、ネバムンの墓の壁画については世界最古の猫の絵と断定するのではなく、人間と猫との関係を示す非常に古く有名な絵画の一つと考えるのが適切です。
この作品で重要なのは、猫だけが独立して描かれているのではなく、人間の狩猟場面に入り込んでいることです。猫の絵画史は、猫そのものの歴史であると同時に、人間が猫をどのような存在として見てきたかをたどる歴史でもあります。
ルネサンス|レオナルド・ダ・ヴィンチが観察した猫の動き
ルネサンス期には、動物の身体や運動そのものへの関心が高まりました。レオナルド・ダ・ヴィンチの《猫、ライオン、竜》には、じゃれ合う猫、丸くなる猫、振り返る猫などが次々と描かれています。完成した一枚の猫の絵ではなく、さまざまな動きを素早く捉えた観察の集積であることが特徴です。

江戸時代|浮世絵の人気者になった猫
日本では江戸時代になると、猫は庶民の暮らしに近い動物として浮世絵にたびたび登場します。美人のそばで遊ぶ猫、紐にじゃれる猫、人間のように振る舞う猫など、その描かれ方は非常に多彩でした。
特に歌川国芳は、猫を使ったしゃれや擬人化で独自の世界を作り上げました。一方、喜多川歌麿の美人画では、猫が女性の日常生活に自然に入り込み、江戸の暮らしの一場面として描かれています。江戸時代の猫をまとめて見たい方は猫が登場する浮世絵10選、歌麿については喜多川歌麿と猫で紹介しています。
近代日本画|猫そのものが絵の主役へ
近代日本画では、猫は人物の脇にいる動物ではなく、一匹の生命そのものとして絵画の主役になります。菱田春草《黒き猫》や竹内栖鳳《班猫》はその代表です。猫の毛並みや身体の量感を描くだけでなく、こちらを見返す視線や、静止していながら次の瞬間には動き出しそうな気配まで表現しています。

19世紀から20世紀|身近な猫から画家の内面へ
19世紀ヨーロッパでは、猫は家庭や人物画の中に登場する身近な伴侶として描かれるようになります。ルノワール《猫を抱く女性》では、人と猫が身体を寄せ合う親密な関係そのものが作品の魅力になっています。
20世紀になると、猫の表現はさらに自由になります。藤田嗣治は独自の線描と人物表現の中に猫を繰り返し登場させ、パウル・クレーは《猫と鳥》で、猫の外見だけでなく意識や欲求まで画面に表しました。猫は「見たものをそのまま描く対象」から、画家自身の感覚や思想を表現するモチーフへと広がっていったのです。
日本の猫の絵|浮世絵と日本画では何が違う?
日本の猫の絵を見るときに注目したいのが、江戸時代の浮世絵と近代日本画の違いです。浮世絵の猫は、人間の生活や物語の中に入り込み、時には擬人化され、笑いやしゃれを生み出します。国芳や歌麿の猫を見ると、江戸の人々にとって猫が身近で親しまれた存在だったことが伝わってきます。
一方、菱田春草や竹内栖鳳の作品では、猫そのものをじっくり観察する視線が前面に出ます。猫の体の形、毛並み、目の輝き、姿勢、気配が主題となり、「一匹の猫を描くだけで一枚の絵画が成立する」というところまで猫の存在が大きくなっています。
さらに藤田嗣治になると、日本と西洋の美術を行き来する画家自身の表現の中に猫が入り込みます。同じ「猫の絵」でも、江戸の遊び、日本画の写生、近代的な自己表現では、猫が担う役割がまったく異なります。
猫の絵を見るときに注目したいポイント
猫が主役か、人物と一緒に描かれているか
まず見たいのは、猫が作品の主役なのか、それとも人物や物語の中に登場する脇役なのかという点です。《黒き猫》や《班猫》では猫そのものが主役ですが、ルノワールの作品では人と猫との関係が重要です。猫の置かれた位置を見るだけでも、画家が何を描こうとしたのかが見えてきます。
目線と姿勢を見る
猫の絵では、目、耳、背中、脚、尻尾まで見てみましょう。こちらを警戒する猫、眠る猫、何かを狙う猫、振り返る猫では、同じ動物でも印象が大きく異なります。レオナルド・ダ・ヴィンチが何度も猫の姿勢を描いたように、猫らしさは顔だけでなく身体全体に現れます。
画家が「猫の何」を描いたのかを見る
歌川国芳ならユーモア、竹内栖鳳なら観察と生命感、ルノワールなら人との親密さ、クレーなら猫の内面。同じ猫を描いても、画家が注目する部分は違います。「かわいい猫の絵」として見るだけでなく、この画家は猫のどこに惹かれたのだろうと考えると、作品の見え方が変わります。
古代の壁画から浮世絵、日本画、西洋絵画まで見てきたように、猫は時代が変わっても画家を惹きつけ続けています。そして現在も、猫は日本画、油彩、版画、パステル、アクリルなどさまざまな技法で描かれています。
猫の絵を飾る|福福堂のオンライン猫展
猫の絵を眺める楽しみを、ご自宅でも。福福堂 ギャラリー上原では、猫を描いた現代の作家の作品を販売しています。のびのびとくつろぐ姿、安心して眠る表情、好きなものに囲まれる幸せ。油彩・パステル・銅版画・アクリル画で描かれた、それぞれに愛らしい猫たちをご紹介します。作品はすべて額装済みです。
※期間限定作品のため、予告なく作品の掲載が終了する場合があります。
前川裕子「ごろん」
ごろんと寝転び、すっかりくつろいだ猫。絵具を盛り上げた豊かな色彩で、猫と暮らす日常のひとこまを描いた油彩画です。
油彩・キャンバスボード
作品サイズ:14.5×18cm
額装済み
33,000円 (税込)
作品の詳細・購入はこちら原田愛「小さな寝息」
安心して眠る猫の姿を、優しいパステルで描いた作品です。家族として共に暮らす猫への温かなまなざしが、穏やかな表情に重なります。
パステル・キャンソンミタント紙
作品サイズ:F4号近似(約33.3×24.2cm)
額装済み
96,800円 (税込)
作品の詳細・購入はこちら三浦麻梨乃「心ふくよかに」
芋・栗・南瓜に囲まれた、幸せそうな三毛猫。好きなものに囲まれる喜びを、遊び心たっぷりに描いた銅版画です。
銅版画・ハーネミューレ紙、雁皮紙
限定50部/額装済み
額縁外寸:32.5×26.5×2cm
33,000円 (税込)
作品の詳細・購入はこちら長谷川理奈「シュレディンガーのプリン~黒猫を添えて~」
冷蔵庫の中のプリンをめぐる想像を、黒猫とともに描いた、ユーモアと物語性のある作品です。額縁にも作家が装飾を施し、絵と額を一緒に楽しめる小品に仕上げています。
アクリル画
作品サイズ:12×12cm
額縁に作家による装飾/額装済み
29,700円 (税込)
作品の詳細・購入はこちら長谷川理奈「あけぼの猫」
春爛漫の夜明けの光と、白猫の姿を重ねたアクリル画です。言葉からイメージを広げて描く長谷川理奈の、詩情のある猫の世界を楽しめます。
アクリル画
作品サイズ:14×18.6cm
額装済み
33,000円 (税込)
作品の詳細・購入はこちら作品画像またはボタンを押すと、福福堂 ギャラリー上原のオンラインショップが開きます。送料・在庫・最新の販売価格は、各商品ページでご確認ください。三浦麻梨乃「心ふくよかに」は銅版画のため、掲載画像と異なるエディションをお届けする場合があり、刷りによる若干の個体差があります。
猫の絵を部屋に飾るときの選び方
猫の絵を部屋に飾るなら、「猫が好きだから」という直感を大切にしながら、猫の表情や姿勢、作品の色、大きさ、額縁と部屋との相性を見ると選びやすくなります。同じ猫の絵でも、丸くなって眠る猫と、こちらをまっすぐ見つめる猫では、部屋に置いたときの印象が大きく変わります。
猫の表情や姿勢で選ぶ
眠る猫やくつろぐ猫の絵は、穏やかで静かな印象を与えます。反対に、こちらを見つめる猫、歩く猫、遊ぶ猫を描いた作品には動きがあり、壁面のアクセントになります。猫の種類や毛色だけではなく、その猫が何をしているのかまで見ると、自分の部屋に合う作品を選びやすくなります。
部屋の色と作品の色を見比べる
白やベージュを基調とした部屋なら、淡い色彩の猫の絵をなじませる方法もあれば、黒猫や鮮やかな背景色の作品を一点置いて印象を引き締める方法もあります。家具と同じ色でそろえる必要はありません。むしろ、作品の中にある一色とクッション、カーテン、家具などの色が響き合うと、絵が自然に空間へ入っていきます。
小さな猫の絵は「余白」を残して飾る
小品は大きな壁を埋めようとするより、周囲に余白を残して一枚を見せると作品そのものに目が向きます。棚や家具の上の壁など、日常の中で自然に視線が向く場所にもよく合います。複数の作品を飾る場合は、額縁の外側まで含めた大きさを見ながら、作品同士の間隔をそろえるとまとまりやすくなります。
額縁まで含めて一つの作品として見る
猫の絵は、額縁によって印象が大きく変わります。木の質感を生かした額なら柔らかな雰囲気になり、細い黒や白の額なら画面がすっきり見えます。作品を購入するときは絵だけを見るのではなく、額装された状態で自宅の壁に置いた姿を想像してみるのがおすすめです。
猫の絵を長く楽しむための飾り方
原画を飾るときに最も気をつけたいのは、強い光、熱、水分、急激な湿度変化です。油彩、アクリル、日本画、パステル、版画など技法によって性質は異なりますが、作品を傷める環境を避けるという基本は共通しています。
直射日光が当たる場所は避ける
窓から入る直射日光を長期間受けると、顔料や紙などの退色や劣化につながります。「昼間だけだから大丈夫」と考えず、一日の中で太陽の位置が変わったときにも作品へ直接光が当たらない場所を選びましょう。明るい部屋に飾る場合も、直射日光ではなく間接的な光で見る方が作品を長く楽しめます。
エアコン・暖房・水回りの近くを避ける
暖房器具の上、エアコンの風が直接当たる場所、湿気の多い場所などは、絵画を飾る環境として適していません。温度や湿度が大きく変化すると、キャンバス、紙、木製パネル、絵具などが伸縮し、作品に負担がかかります。浴室に近い壁や、調理の蒸気・油分が届きやすい場所にも注意が必要です。
壁への固定もしっかり確認する
作品を掛ける金具は、作品と額縁の重さに対応したものを使用します。壁材に適したフックを選び、額の裏側の紐やワイヤー、金具も定期的に確認してください。特に猫と暮らしている家庭では、猫が棚へ飛び乗ったり壁際を走ったりすることも考え、落下しにくい場所と固定方法を選ぶことが大切です。
猫の絵が象徴する意味とは?
猫の絵には「自由」「幸運」「神秘」などさまざまな意味が語られます。しかし、美術史では猫には世界共通の一つの意味があるわけではありません。同じ猫でも、古代エジプト、日本、西洋では人との関係が異なり、さらに一枚一枚の作品によって役割も変わります。
| 時代・地域 | 猫に結びついた主なイメージ | 美術での現れ方 |
|---|---|---|
| 古代エジプト | 神聖さ・守護 | 女神バステトとの結びつき、奉納像、墓の壁画など |
| 中世ヨーロッパ | 愛玩・鼠捕り・寓意・魔術など多様 | 写本の日常場面や寓意、のちには魔女を扱う図像にも登場 |
| 江戸時代の日本 | 愛玩・縁起・ユーモア・怪異 | 美人画、戯画、擬人化、招き猫、化け猫など |
| 19世紀以降 | 親密さ・個性・日常 | 人物と暮らす猫や、猫そのものを主役とする絵画 |
| 近現代 | 自由な造形・心理・物語 | 写実から抽象的表現まで、画家独自の猫像へ広がる |
古代エジプト|猫は神聖さと守護に結びついた
古代エジプトでは、新王国時代には猫が人と暮らす姿が美術に現れ、その後の時代には猫が女神バステトと強く結びつきました。バステトは守護的な性格を持つ女神で、猫の姿をした像や猫頭の女神像も数多く制作されました。そのため古代エジプトの猫を「守護」「神聖さ」と結びつけて見ることには歴史的な背景があります。
ただし、古代エジプトの猫が描かれた作品すべてに同じ意味があるわけではありません。たとえばネバムンの墓の壁画では、猫は沼地で鳥を捕らえる活発な動物としても描かれています。猫の意味は、作品の用途や場面を含めて見る必要があります。
日本|かわいい猫、縁起のよい猫、化ける猫
江戸の猫文化には、現在の私たちにも通じる猫好きの姿があります。猫は鼠を捕る動物であると同時に、武家や町人の家で飼われる愛玩動物でもありました。浮世絵では、美人のそばで遊ぶ猫から、人間のように踊ったり働いたりする猫まで、非常に多彩な姿が描かれています。
一方で、日本には招き猫のような縁起物がある一方、猫又や化け猫の物語もあります。つまり日本の猫も「幸運の象徴」だけではありません。親しみ、笑い、縁起、怪異という相反するイメージを持っているところに、日本の猫表現のおもしろさがあります。江戸の作品については猫が登場する浮世絵10選で詳しく紹介しています。
ヨーロッパ|「猫=不吉」だけではない
中世ヨーロッパの猫について、「魔女の使いとして嫌われていた」とだけ説明されることがありますが、実際の関係はもっと複雑です。中世の写本には鼠を捕る猫や紐で遊ぶ猫が描かれ、猫を身近な伴侶として扱った記録も残されています。その一方で、後世の魔女を描いた美術の中に猫が登場する例もありました。
したがって、西洋美術の猫を一律に「不吉の象徴」と読むことはできません。作品が制作された年代、主題、猫が画面のどこで何をしているのかを見て判断することが重要です。
黒猫の絵は不吉なのか?
黒猫が描かれているだけで、その絵が不吉ということはありません。黒という毛色と、猫に結びついた迷信は別に考える必要があります。日本では菱田春草《黒き猫》のように、一匹の黒猫の姿そのものを美しく描いた名作があります。近現代の猫の絵でも、黒猫は輪郭や瞳が際立つ魅力的なモチーフとして数多く描かれています。
黒猫の絵を見るときも、「黒猫だから○○を意味する」と決めつけず、画家がその色、姿勢、視線、背景をどのように組み合わせたのかを見る方が、作品を深く楽しめます。日本画の猫については猫の日本画とは|菱田春草『黒き猫』・竹内栖鳳『班猫』から見る猫の魅力もあわせてご覧ください。
猫の絵は風水で縁起がいい?
「猫の絵を飾ると運気が上がる」「この方角に猫の絵を飾るとよい」といった説明を見かけることがありますが、すべての猫の絵に共通する美術史上の決まりではありません。猫が持つ意味は文化や作品によって異なり、絵画そのものに特定の方角や効果が決められているわけではありません。
一方、日本で招き猫が福や商売繁盛を願う縁起物として発展したことには歴史があります。そのため、猫というモチーフに「福を招く」というイメージを感じること自体は、日本文化の中では不自然ではありません。
猫の絵を自宅に飾るなら、風水上の効果を断定的に求めるより、毎日見たくなる作品か、部屋に置いたとき気持ちよく感じられるかを基準に選ぶ方が、絵画との長い付き合いにつながります。
猫の絵に関するよくある質問
猫の絵で有名な日本人画家は誰ですか?
特に有名なのは、歌川国芳、菱田春草、竹内栖鳳です。国芳は猫を擬人化した浮世絵を数多く制作し、菱田春草は《黒き猫》、竹内栖鳳は《班猫》という近代日本画を代表する猫の名作を残しました。国芳の猫については歌川国芳と猫で詳しく紹介しています。
世界で最も古い猫の絵は何ですか?
「世界最古の猫の絵」を一作品だけに断定することは困難です。ただし、人と猫との関係を示す非常に古く有名な例として、紀元前1350年頃の古代エジプト《ネバムンの墓の壁画》があります。沼地で鳥を狩る場面に猫が描かれています。
猫が描かれた有名な絵には何がありますか?
古代エジプトの《ネバムンの墓の壁画》、歌川国芳《其のまゝ地口 猫飼好五十三疋》、菱田春草《黒き猫》、竹内栖鳳《班猫》、パウル・クレー《猫と鳥》などがあります。より多くの作品を見たい方は世界の猫の名画20選をご覧ください。
猫の絵を玄関に飾っても大丈夫ですか?
玄関でも飾れますが、直射日光が入る場所や、外気の影響で温度・湿度が大きく変化する場所には注意が必要です。作品保存の観点では、強い日差し、結露、湿気、暖房や冷房の風を避け、安定した環境に飾ることをおすすめします。
猫の絵はプレゼントにも向いていますか?
猫が好きな方への贈り物として選びやすいモチーフです。ただし「猫なら何でもよい」わけではなく、相手が好きな毛色や猫種、絵の雰囲気、飾りやすいサイズなどを考えて選ぶと、よりその人に合った一枚になります。小品や額装済みの作品は、受け取ったあと比較的すぐに飾れる点も魅力です。
まとめ|猫の絵は、画家と人間が猫をどう見てきたかを映す
猫の絵には、古代エジプトの壁画、江戸の浮世絵、近代日本画、西洋絵画、そして現在の作家が描く作品まで、長い歴史があります。歌川国芳のユーモラスな猫、菱田春草や竹内栖鳳が見つめた一匹の猫、ルノワールが描いた人と猫との親密さ、クレーが表した猫の意識。同じ猫というモチーフでも、画家が見ているものはそれぞれ違います。
だからこそ猫の絵を選ぶときも、「有名だから」「縁起がよいから」だけで決める必要はありません。猫の表情や姿勢、色、画家の視線に惹かれ、何度も見たくなる作品こそ、その人にとって長く楽しめる一枚です。
猫の名画を知ることも、現在の作家が描く猫の絵を自宅に飾ることも、猫という身近な存在を新しい目で見るきっかけになります。この記事の「猫の絵を飾る|福福堂のオンライン猫展」で、現在購入できる作品も紹介しています。
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