印象派の画家モネの人生と、有名な作品「睡蓮」シリーズを解説

印象派の画家クロード・モネの人生

『陽を浴びるポプラ並木』1891年、クロード・モネ

 クロード・モネは1840年11月14日、フランスのパリで生まれました。幼少期をノルマンディー海岸のル・アーヴルで過ごし芸術と自然への愛を育みました。若い頃にパリのエコール・デ・ボザール(パリ国立高等美術学校)で学びましたが伝統的な手法に従うのではなく、風景や自然の光をとらえた「en plein air」(オン プレ ネール:自然のままに描くこと)を好みました。
 1860年代、モネはオーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir 1841-1919 フランスの印象派の画家)、カミーユ・ピサロ(Camille Pissarro 1830-1903 フランスの印象派の画家)、エドゥアール・マネ(Edouard Manet 1832-1883 フランスの画家)といった当時の革命的な画家たちと親交を深めました。彼らは伝統的な絵画技法を否定し、光と色彩の儚い効果をとらえようとする印象派運動をともに起こしました。
 モネは生涯の中で、干し草の山、ポプラ並木、ルーアンの大聖堂、そして睡蓮のシリーズなど、美術史上最も有名な傑作の数々を描きました。またフランス国内外を旅し、常に新たな主題と絵画のインスピレーションを求めることに貪欲でした。
 1883年、モネはノルマンディーの小さな村ジヴェルニーに移り住み、睡蓮の池のある有名な庭を作りました。モネはそこで残りの生涯を過ごし、庭と睡蓮の池を描くことに没頭しました。
 1926年12月5日、モネは86歳でこの世を去りました。彼の作品は近代美術の発展に影響を与え、いまだに世界中の芸術家や美術愛好家にインスピレーションを与え続けている存在です。

印象派の画家モネの代表作『睡蓮』シリーズ、写真紹介と解説

より抽象的な表現へと変化した作風

ここでは印象派の画家クロード・モネの有名なシリーズ「睡蓮」の作品を幾つか選び、解説を添えて作品写真とともにご紹介します。

 睡蓮シリーズは、フランスの印象派画家クロード・モネの代表的な絵画シリーズで、日本でも人気が高い一連の作品です。200点以上描かれたようです。モネは人生の大半をフランスのノルマンディー地域圏にあるジヴェルニーで過ごしましたが、睡蓮シリーズはそのジヴェルニーの庭の睡蓮を描いたものです。モネの庭にはいくつかの池や水盤があり、それぞれに睡蓮やその他の水生植物が植えられていました。

モネは絵画のインスピレーションの源として庭の耕作と維持管理に多くの時間を費やしました。モネは特に睡蓮に魅了され、光や天候の異なる条件下でその美しさと変化を観察し表現しました。水面に浮かぶ睡蓮の群生は、作品の中でリズミカルなパターンと光の戯れを生み出しました。モネが睡蓮品を描いたのは晩年に差し掛かってからでしたが、睡蓮は彼の作風を象徴するモチーフのひとつとして知られることになりました。

 睡蓮シリーズはモネの作品の中でも、そしてまた美術史の中でも大きな革新となりました。現実を描写する写実に立脚した表現から、より抽象的な表現(形や色彩の探求)への移行を示す作品となりました。

「形」:単純化された形は、観覧者の自由な解釈に委ねられているかのよう

 「形」の面でモネはもはや庭の正確な細部を表現しようとせず、むしろ情景や雰囲気を描くことに挑んでいます。睡蓮や光の反射は色の斑点や暗示的な線へと単純化して描かれ、それが何を表すのかは私たち観覧者の自由な解釈に委ねられているようです。水に浮かぶ睡蓮、水に反射する光や木々や空、遠く水平線に向かって溶け込むように描かれる水面。
 モネは「睡蓮」の中で様々な絵画技法を試行錯誤しています。光とその動きの本質をとらえるために身振り手振りのような筆さばきを画面上に残しています。時にはキャンバスをほとんど塗らずに「水の輝き」や「太陽の輝き」を描いています。その一方で、ゆっくりと色彩をぼかすことで池の水の深みと静けさを画面上に表現しています。そしてそれらを画面上で共存させています。

「色彩」:季節や時間帯・大気の状態の違いを描いた

 「色彩」の面では、季節や時間帯・大気の状態を反映しその違いを描いています。青や緑の爽やかな色合いが支配する時間帯の作品もあれば、夕方のピンク・紫・オレンジの暖かな色合いで描かれた作品もあります。そういった微妙な色彩の変化が瞑想的な静寂の雰囲気を醸し出し、観覧者を自然の美しさへと没入させてくれます。

モネが与えた影響

 モネの「睡蓮」は印象派の代表的な作品のひとつとなり近代美術の象徴となりました。実際にモネの「睡蓮」は20世紀の抽象画の発展に大きな影響を与えています。ワシリー・カンディンスキー(Wassily Kandinsky 1866-1944 ロシアの画家)、ピート・モンドリアン(Piet Mondrian 1872-1944 オランダ→アメリカの画家)、ジャクソン・ポロック(Jackson Pollock 1912-1956 アメリカの画家)といった芸術家たちはモネの作品に触発されました。写実と抽象の絶妙な組み合わせ、光と色彩の革新的な探求、そしてそれを伴っての感情表現は、美術史に残る傑作のひとつといえるでしょう。

あとがき

ご覧いただきありがとうございました。弊社福福堂は生きている画家のプロデュースをして創業20年を迎えました。彼ら彼女らのほとんどは20代~60代です。全国の百貨店や街のギャラリーで展覧会を開き生活しています。訪れた町でスケッチをして作品に活かしたり、出会った画家や人々と交流して新しい知見を得たりしながら新たな作品を生んでいます。同じ風景を見ても生み出す作品は様々です。

画家それぞれに得意不得意や流儀があり苦労することもありますが、個展が成功すると共に喜びを分かち合います。それが20年画商業を続けてこられた理由の1つです。記事を読んで絵に興味を持たれた方はぜひ彼ら彼女らのインタビュー記事もぜひご一読ください。読者の皆さまが展覧会場で生きた画家の描く原画と出会い楽しみを感じてもらえることを願って日々記事を書いております。

(福福堂 編集部)

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