万葉集をライフワークにされている槇冬菫さん。
週明けから始まる個展では、柿本人麻呂の相聞歌をテーマの一つにしています。
ささの葉は三山もさやに乱友 吾妹おもふ
(ささのは みやまもさやに さやげども われいもおもう)
実はこの歌はこの後「別れ来ぬれば」と続きます。
笹の葉も山も揺れ動いているように見えるけれど、私は妻が恋しい、(先ほど別離したので・・。)
という意味でしょうか。
島根の石見に赴任していた人麻呂が、石見に妻を置いて都に戻るときの歌と言われています。
愛しい人との一時の別れではなく、別離と解釈されています。この「妻」が誰を指すのか諸説あるところではあるものの、愛しい人との別れと寂寥を表しています。
槇さんの書では、「さやに乱友」が細く儚く乱れてます。
そしてこの碧の深さは、水面に漂う儚い心のようでもあるように私には思えます。
また人麻呂の歌から離れて、書そのものを見ると、笹でできた小舟を水面に浮かべ、その行く末の定まらぬ様子に心乱れる・・・・そのような情景も心に浮かびました。これは全くのインプレッションですが。
今回の個展では、富山の自然の深い緑、美しい海の青を表すキーワードとして「越の碧」が使われています。
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